ESG投資に積極的なのは英米型?大陸型?
近年ますます注目を集めているESG投資。このESG投資が、企業の環境や社会への取り組みにどのような影響を与えるのかを、東京工業大学工学院の藍口梨里花先生らによる論文「機関投資家の制度的背景と企業のESG活動:クロスカントリー分析」を基に、分かりやすく解説します。
ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)という3つの側面を考慮して投資を行うことです。具体的には、二酸化炭素排出量の削減に取り組んでいる企業や、従業員の労働環境を改善している企業、経営の透明性が高い企業などを選んで投資します。
ESG投資が注目される背景には、地球温暖化や貧困、人権問題など、社会が抱える課題が深刻化していることがあります。従来の投資は、企業の財務状況や成長性のみを重視していましたが、ESG投資は企業の社会的な責任も評価することで、持続可能な社会の実現に貢献しようとするものです。
この論文では、機関投資家(年金基金や投資信託など、多額の資金を運用する投資家)がESG投資を積極的に行うことで、投資先の企業はより環境や社会に配慮した経営をするようになると仮定し、その影響を分析しています。しかし、機関投資家がESG投資をどれだけ重視するかは、その機関投資家が拠点を置く国の法律や制度によって異なると考えられます。
そこで、アメリカ、日本、フランス、ドイツ、イギリスという主要5か国の企業を対象に、各企業に投資している機関投資家の所在地(85か国)の法律や制度を調べ、ESG投資が企業のESG活動に与える影響を分析しました。
分析の結果、シビルロー(大陸法)という法体系を持つ国(主にフランス、ドイツ、日本など)に拠点を置く機関投資家は、投資先の企業の環境や社会への配慮を促す傾向があることが明らかになりました。一方、コモンロー(英米法)という法体系を持つ国(主にイギリス、アメリカ、カナダなど)に拠点を置く機関投資家には、そのような傾向は見られませんでした。
この違いは、それぞれの国の法律や制度が、機関投資家が何を重視するか(例えば、短期的な利益か、長期的な社会貢献か)に影響を与えているためと考えられます。シビルローの国では、法律や制度が社会全体の利益を重視する傾向があるため、機関投資家もESG投資を積極的に行うと考えられます。一方、コモンローの国では、法律や制度が個人の自由や企業の利益を重視する傾向があるため、機関投資家はESG投資に消極的なのかもしれません。
この論文では、シビルロー(大陸法)の国を拠点とする機関投資家のなかでも、特にその国出身の機関投資家が、投資先の企業の環境や社会への取り組みを促進する効果が高いことが分かりました。これは、地元の機関投資家の方が、その国の文化や価値観、社会的な課題をよく理解しているため、企業のESG活動をより適切に評価し、働きかけられるからかもしれません。
実生活への応用:私たちにできること
その国の制度や文化が、金融機関の投資方針にも影響が与えている。そんな本論文のメッセージを踏まえれば、私たち一人一人がどんな社会を作りたいのかが、巡り巡って私たちの国の金融システムを構築していくのだ、ということが言えます。
あなたの出来るところから、ESGに積極的な社会を構築していくこと、そうしたことを重視する文化を作っていくことが、企業や金融機関のESGには大切なのです。
自分の年金や投資信託の運用状況を徹底チェック!
自分が加入している年金や投資信託を運用している会社が、ESG投資についてどんな取り組みをしているのかを調べてみましょう。運用報告書やウェブサイトでも、ESG投資に関する情報が公開されている場合があります。
企業のESG活動を積極的に応援しよう!
企業のウェブサイトやニュースリリースなどで、ESG活動に関する情報をチェックしましょう。環境に配慮した製品を選んだり、社会貢献活動に熱心な企業の商品をSNSで紹介したりすることで、企業に直接的な応援メッセージを送ることができます。
株主として企業に働きかけよう!
株式投資をしている場合は、株主総会で企業のESG活動に関する質問をしたり、意見を述べたりすることができます。また、企業のESG活動を評価するNPOやNGOの活動を支援することも、間接的に企業に働きかけることにつながります。
地域社会の課題解決に貢献しよう!
地域社会には、高齢化や過疎化、環境問題など、さまざまな課題があります。地域のボランティア活動に参加したり、地元のNPOやNGOを支援したりすることで、地域全体のESG活動を促進できます。
ESG投資に関する情報を学び続けよう!
ESG投資は、まだ新しい分野であり、情報も常に変化しています。セミナーや勉強会に参加したり、専門家の意見を聞いたりしながら、ESG投資に関する知識を深め、自分自身の投資判断力を高めましょう。
倫理的な消費を心がけよう!
フェアトレード製品や、地元の農産物など、生産者の労働環境や地域経済に配慮した商品を選ぶようにしましょう。
また、不必要な消費を控え、物を大切に使うことも、環境負荷を減らすことに繋がります。
企業に改善を求めよう!
企業の活動が、環境や社会に悪影響を与えていると感じたら、企業に直接意見を送ってみましょう。消費者の声は、企業にとって無視できない重要な情報源となります。
投資は未来への投票、私たち一人ひとりが社会を変える力になる
ESG投資は、単に利益を追求するだけでなく、社会を良くするためのツールです。
今回の論文で紹介したように、機関投資家の所在地によってESG投資への取り組み方が異なることがわかりました。しかし、私たち一人ひとりが、ESG投資に関心を持って行動することで、企業の経営方針や社会全体の価値観を変えていくことができるのです。投資は、未来への投票です。責任ある投資家として行動することで、持続可能な社会の実現に貢献しましょう。
