積極構築した関係と、受動的に得た関係では、効果は変わるのか ネットワーク理論を揺るがす重要発見

積極構築した関係と、受動的に得た関係では、効果は変わるのか ネットワーク理論を揺るがす重要発見

ネットワーク理論—周囲の関係が、あなたの人生の成功度合いを決める

皆さんは日頃、どんな仲間と仕事をしているでしょうか。どんな友人関係の中で生きているでしょうか。すこし、イメージしてみてください。

次の質問です。皆さんのその仕事の仲間と、プライベートの友人関係は、「皆さんの人間像や、技能、モチベーションの結果として得られたもの」でしょうか。それとも、「偶然的に、たまたま得られたもの」でしょうか。両方の側面があるでしょうが、自分自身を振り返って、どちらの側面のほうが強いと感じますか。

社会学や経営学では、これは大変重要な問いです。これらの学問領域では、ネットワークが個人や組織のパフォーマンスに強く影響を及ぼすことが知られています。そのネットワークがたまたま得られるものだとすれば、人生はかなり運です。一方で、ネットワークは自分で作るものであるという側面が強いとすれば、努力や工夫によって自らのパフォーマンスや、ネットワークから受けられる便益は大きく変わり得るのだということになります。

理論的にも、統計的にも、半世紀以来の難問なのですが、企業のアライアンスネットワークについて、どちらの側面がどれだけ強いのかをかなり厳密に検証したのが、北米ウォートンスクールのヘルナンデス先生たちによる論文「Toward an improved causal test of network effects」(ネットワーク効果についての改善された因果関係検証に向けて)です。

自助のネットワークか、運良く得られたネットワークか

ヘルナンデス先生たちは、バイオ業界における企業間のアライアンスについて、2種類のアライアンス・ネットワークの改編の効果を比較することで、自助によって作られたネットワークと、たまたま運良く得られたネットワークで、パフォーマンスに違いが出るのかを検証しました。

●企業が自ら能動的にアライアンスを構築しにいった場合
●競合他社が組んだアライアンスへの対抗として、受動的にアライアンスを構築しに行った場合

論文では、それぞれのアライアンスが、どれだけイノベーションの創出に寄与するかを分析したところ、
前者:能動的にアライアンスを作りに行った場合にはイノベーション創出にプラスだったけれども、
後者:受動的に組まざるを得なかったアライアンスはそのような効果が観察されない、
という結果となりました。後者のケースが、外から見ればいかに魅力的なネットワーク上の位置取りを勝ち得ていたとしても、それでもなお、後者の状況でアライアンスから高い成果を得られたケースはごくまれだったのです。

この結果はつまり、バイオ産業のアライアンスという、ビジネスの世界での関係構築について言えば、「あなたの人間像や技能、モチベーションによって作りにいった関係」が結果をもたらすのである、ということを意味します。ネットワークに先立ち、個としての才覚や戦略こそが大切だった、ということになるのです。

この結果が意味することは大変重要です。これまで経営学では、固有のネットワーク内に位置取ることで、企業はそのネットワークから便益を得ることができることが検証されてきていました。ですが、そのネットワーク上の固有の位置取りに、どれだけ企業としての努力だとか戦略の妙が寄与しているのかは、問われてこなかったのです。

この研究は、限定的な条件下ではありますが、たまたま運よく美味しい位置取りを得ただけの会社では、それをハイパフォーマンスに変えることはできなかったことを明らかにしました。狙ってそういう位置取りを取りに行った会社こそが、高い成果を挙げていたのです。

ネットワーク理論の根幹を揺るがす、重要な発見

この研究は、長年信じられてきた「ネットワークが企業の成果を決める」という基本理論に対して、限定的条件下ではあれど、それを覆すような結果を示した。「企業の能動的な仕掛けによって構築されたネットワークが成果を決める」のであるとすれば、それはつまり、本質的にはネットワークの効果ではなく企業の戦略や努力、あるいは能力こそがパフォーマンスを決めるということになるのです。

さて、冒頭の問いに戻りましょう。
皆さんにとって、あなたの周りの友人関係や職場、仲間のネットワークは「自分から作りにいったもの」でしょうか。それとも「たまたま作られたもの」でしょうか。多くの成功者は、人との出会いを「ラッキーだった」と振り返ります。しかし、そのラッキーが、見えざる努力の結果であるとすれば、私たちはその言葉を真に受けてはいけないことになります。

成功者はネットワークを能動的に作りにいっているのかもしれない。エビデンスとしてはまだまだ積み上げが必要ですが、「たまたま運が良かった論」には、すこし懐疑の目を向け、能動的なネットワーク再構築も、ぜひ考えてみるとよいのかもしれません。

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