製品デザイン 経営にとっての意味とは

製品デザイン 経営にとっての意味とは

ビジネスを加速させる製品デザインの科学的な捉え方

ビジネスの場で「デザイン」という言葉が出ると、つい「見た目の良さ」や「デザイナーの感性」をイメージしがちです。もちろん美しさは大切ですが、現代の競争環境で感覚だけに頼るのはリスクが高いと言えます。なぜなら、デザインは売上・ブランド・顧客体験に直結する一方で、議論が曖昧になりやすく、意思決定がブレやすいからです。

実は経営学の世界でも、製品デザインの重要性は以前から注目されてきました。ただ、「デザインをどう捉え、どう測り、戦略にどう組み込むのか」は長い間ブラックボックスでした。東北大学の秋池篤先生、一橋大学 イノベーション研究センター 吉岡(小林)徹先生によるレビュー論文「「製品デザイン」の捉え方:経営学研究への応用」は、主要な学術論文58本からデザインを「なんとなく」ではなく「説明できる言葉」に変換するための整理をおこないました。

デザインを解読する「8つの鍵」

この論文では、製品デザインの3次元モデル(機能性・美観・象徴性)に加え、精査された論文で言及されていた要素を整理し、デザインを読み解く8つの要素を示しています。

(1) 機能性:スペック値そのものではなく、「使いやすそう」「目的を果たせそう」と見た瞬間に伝わる性能(形状・ボタン配置など)。機能性の知覚は購買意欲を直接高めます。
(2) 美観:美しい・かっこいいと感じさせる魅力。注意を引き、ブランド好意を通じて購買に効くことが多い要素です。
(3) 象徴性:製品を通じた自己表現や「自分らしさ」の確認につながる意味。感情を動かし、動機を強めやすいとされます。
(4) デザインの複雑性:要素の多さや配置の複雑さ。過度は負担になりますが、「手間・職人性」を感じて好意的評価につながる場合もあります。
(5) 典型性:カテゴリーらしさ(車なら車らしい形など)。一定の典型性があると理解が容易で、安心して受け入れられやすくなります。
(6) 新規性:新しさ・刺激。未知すぎても敬遠され、無難すぎても埋もれるため、「ほどほどの新規性」が有利になり得ます。
(7) 識別性:他社・自社既存品との差の大きさ。差別化と「受け入れられる正統性」のバランス、つまり最適な“違い”が重要です。
(8) 知覚されたアフォーダンス:見ただけで使い方が想像できる形のヒント(取っ手、凹みなど)。直感的に扱えるほど評価や購買意欲が高まりやすいとされます。

デザインは「経営資源」であり「共通言語」

ここまで整理しても、デザインの測り方はまだ統一されておらず、研究にも実務にもコストがかかるのが現実です。そのため今後は、3次元モデルの精緻化、関連要因との関係整理、類似概念の交通整理、代理指標の探索などが進められてゆくでしょう。

とはいえ、実務にとって重要なのは、製品デザインはブランド構築・製品開発・マーケティングをつなぐ強力な「戦略的資産」だということです。

デザインをこのように分解して考えられるようになると、会議でありがちな「もっとおしゃれに」「なんか古い」などの曖昧な指示に振り回されにくくなります。代わりに、次のように議論を具体化できます。

  • 「機能性の印象は強いけれど、所有したくなる象徴性が弱いのではないでしょうか」
  • 「新規性は高いですが、ターゲットにとって許容範囲を超えていませんか」
  • 「識別性を上げたいが、カテゴリーの典型性を崩しすぎていませんか」

このように、デザインを「言語化できる要素」として扱えると、部署間での認識合わせが進み、意思決定の質も上がります。

「センス」というブラックボックスを、観察・分解・共有できる形にすること。そこから始めるのが、これからのビジネスパーソンに求められるデザイン・マネジメントの第一歩です。

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