上場子会社 ガバナンスの問題点より成長エンジン側面を重視せよ 新見解の提唱

上場子会社 ガバナンスの問題点より成長エンジン側面を重視せよ 新見解の提唱

日本で顕著に見られる「上場子会社」という異質な存在

上場子会社は、日本固有というわけではありませんが、諸外国ではあまり見られない一方で、日本では長年非常に多く見られていた形でした。豊田自動織機からトヨタ自動車が、NTTからNTTドコモが、富士電機から富士通やファナックが登場したように、日本では親子上場は決して特殊なかたちではなく、日本固有の産業発展に寄与してきた側面もあるのです。ですが、理論的には、親子上場はガバナンス上あまり望ましいことではないとされていました。

関西学院大の吉村典久先生は、論文『「会社」は誰と「対話」をしていくべきか』において、親子上場の肯定的意味を研究し、そこから新しいガバナンスの形について議論をしています。果たして、上場子会社にはどういう産業競争上の意味があるのでしょうか。

上場子会社をめぐる否定的な見解、肯定的な見解

吉村先生は、まず親子上場、あるいは子会社だけの上場について、かつて展開されてきた否定的な見解を整理します。

●親会社が大半の株式を持ったままの上場では、市場で株式を買った少数株主の意見はほとんど反映されず、親会社の意向で経営がなされてしまうため、株主保護や単独での企業価値最大化が追求されきらなくなるリスクがある。

この指摘は妥当なものに見えますが、この論文では、そうした主張に与しないという態度を明確に取ります。その論拠として、子会社が分離独立して上場することが、産業発展に強く寄与してきた実態が展開されていきます。

●トヨタ自動車は、親会社から離れて上場ができたからこそ、自動車産業の成長をとらえることができたからこそ、日本最大の会社となった。

●日立製作所も、久原工業所日立鉱山の工作課長であった小平浪平が立ち上げた鉱山用電気機械の修理工場を源流としながら、鉱山事業から自由に分離独立したことで総合電機の雄となった。

親会社に縛られずに成長をするためには、子会社だけが分離独立して上場する道が開かれていることが大切であったのです。

そしてまた、吉村先生は親会社の存在が子会社の発展を妨げていた可能性が低いとする統計的研究成果の存在も指摘し、潜在的には問題となる可能性があるが、社会全体としては総じて子会社が上場出来る道があったことが日本にとってはプラスに寄与していたと結論付けるのです。

上場子会社は、ガバナンス上問題ある形だとは言い切れない

以上を踏まえて、吉村先生は、上場子会社という存在を否定するのではなく、そこで行われてきた「親会社も、少数株主も、どちらも大切なステークホルダーとしていくマネジメント」を、これからの時代のガバナンスの形として提唱します。

子会社上場という形は、現実的にはかなり避けられるようになってきています。ベンチャーキャピタルなどは親会社が大半の株式をもつスタートアップへの投資を嫌います。親会社と子会社で待遇等が大きく変わってしまうことなどもあり、グループ全体として上場するような形が取られるのが一般的です。

ですが、この調整行為が、伸ばせるときに伸ばせるはず事業が、停滞してしまうリスクを秘めている。この論文はそうした課題を指摘しているのです。親会社の一定の庇護のもと、新規株主からも支援を得て、両方のステークホルダーの意向を受けて、新しい成長分野をとらえて成長する。トヨタや日立がそうであったように、期待が持てる子会社がその子会社として上場出来る道を残しておくことは、産業発展のうえで大切である。本論文はそうしたガバナンスについての重要な別見解を提示しているのです。

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