人材流動性低下が競争力減退の原因か 日本の半導体産業調査【組織科学】

人材流動性低下が競争力減退の原因か 日本の半導体産業調査【組織科学】

要約:【埋もれた才能を掘り起こせ! 半導体技術者再配置の重要性】

 本論文は、慶應義塾大学商学部の松本先生が、日本の半導体産業における特許発明者の再配置(企業間・企業内での異動)に着目し、その実態と影響を分析しています。

結論として、残念ながら日本の半導体企業やその母体である多角化企業において、人的資源の再配置が行われたことを明確に見つけることはできませんでした。半導体発明者という貴重な資源は十分に活かされず、日本の競争力低下につながった可能性が示されています。

研究の流れは以下の通りです。

これまでの特許データ(IIP パテントデータベース 2024 年版)から、日本の大手半導体企業に所属したことのある発明者を特定したところ、約40万人、特許は約160万件に上りました。
また、40万人の動向を精査したところ、4つの視点が示されました。

発明者数は減少
・発明者の新規参入は1990年代初頭がピークで徐々に減少傾向にある。
・2000年頃から参入よりリタイア(退出)が多くなり、総数は純減した。
・退出は2000年代後半以降、毎年約1万人規模で高止まりしている。

発明者の移籍件数は増加
・1990年代末以降、発明者の組織間移動が活発になった。
・2002年、2009年に大規模移動が発生した(M&A関連による)。

発明者の活動期間は短命化
・2000年代以降、5~25年程度の活動期間を持つ発明者の割合が低下している。

新技術分野進出が停滞

実務への応用: 企業が技術革新を促進するために実践できる3つのポイント

一方で、この教訓から学ぶべきことがあります。

「タレントプール」を構築する: 社内外の優秀な技術者をデータベース化し、組織全体で共有できる「タレントプール1」を構築しましょう。
例: 過去に自社に在籍していた優秀な技術者の情報をデータベース化し、必要に応じてコンタクトを取り、共同研究や顧問としての協力を依頼する。

「越境学習」を奨励する: 部署や組織の壁を越えた異動や研修を奨励し、技術者が新たな知識やスキルを獲得できる機会を提供しましょう。
例: 技術者を海外の大学や研究機関に派遣し、最先端の技術を習得させる。

「知の探索」を支援する: 技術者が社内外の情報を自由に探索し、新たなアイデアや技術に触れる機会を積極的に支援しましょう。
例: 学会や展示会への参加を奨励し、技術者が最新の情報に触れられる機会を提供する。

半導体産業に限らず、人材は企業にとって最も重要な資産です。技術者の再配置を戦略的に行うことで、組織全体の技術力を高め、新たなイノベーションを創出できます。
技術者の知識やスキルを最大限に活かすためには、組織の壁を越えた人材の流動性を高めることが重要です。

また、技術者が常に新しい知識やスキルを習得し、自己成長を続けられるような環境を整備することも不可欠です。
これらの取り組みを通じて、日本企業は、グローバル市場で競争力を高め、持続的な成長を実現できるはずです。

  1. タレントプール: 企業が将来必要とする人材を確保するために、社内外の優秀な人材に関する情報を集約し、育成・活用するためのデータベースのこと ↩︎

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