アート思考 デザインとアートの違いとは?
ビジネスの世界では、顧客のニーズに応える「論理的思考」やユーザー視点で課題を解決する「デザイン思考」が重視されてきましたが、これからは「アート思考」と呼ばれる、アート的な視点や感性が重要だと言われています。
しかし、「アート」が実際にビジネスにどう役立つのか、具体的にイメージできない方も多いのではないでしょうか。
京都産業大学の森永泰史先生は、本論文「デザインおよびアートと,イノベーションの統合に関する試論」で、ビジネスパーソンが抱く「アート思考がどのようにイノベーションを生み出すのか?」という疑問に、経営学の視点から答えます。
森永先生はこれまでの膨大な文献データを精査し、新たな思考法を提示、イノベーション研究との接点を模索されました。
まず、森永先生は「デザイン」と「アート」の違いをとらえました。
デザイン:「目的志向的」
特定の課題解決やニーズ充足が役割(例:使いやすいスマホUI、座り心地の良い椅子)。
アート:「自己表現的」・「問いかけ的」
鑑賞者に新たな気づきを与え、既存概念を揺さぶり、新たな意味を提示します(例:抽象画)。
そしてデザインとアートを統合することで、より大きなイノベーション、特に「創造性」が高まると指摘し、イノベーションが起きるメカニズムがあると論じます。
イノベーションが起きるメカニズム
「新たな問い」の創出: アートが「なぜ?」「もしこうだったら?」と既存の常識に疑問を投げかけることで、誰も気づかない問題や可能性につながります。デザインは、その問いを具体的な形にする役割を担います。
多様な意味の探求: アート作品のさまざまな解釈は、製品やサービスが顧客にとってどのような意味を持つのか、どのような感情を呼び起こすのかを深く考える能力を育みます。
既存概念の破壊と再構築: アートが持つ、既存の価値観を破壊し、新しいものを提示する力は、イノベーションに不可欠です。当たり前を根本から見直すことで、全く新しい市場が生まれる可能性を秘めています。
森永教授は、デザインの「課題解決」とアートの「新たな問い設定・破壊」を組み合わせることで、企業は本質的な創造性を発揮し、イノベーションを起こせると示唆します。
ビジネスパーソンがアート思考を実務に活かすためのヒント4選
ビジネスパーソンがアート思考を実務に活かすためのヒントを4つお伝えします。
「問い」を立てる力を養う: 既存課題の解決だけでなく、「そもそも何が問題なのか?」、「本当にこれで良いのか?」と根本的な問いを持つ習慣をつけましょう。アート作品から解釈や疑問を持つ訓練も有効です。
例:「この製品は便利だが、人々は本当に幸せになっているのか?」「もし、この機能を完全に無くしたら何が残るだろう?」
多様な視点と解釈を受け入れる: 同僚や顧客、異なる文化を持つ人々の意見を「多様な解釈の一つ」として受け入れる柔軟性を持ちましょう。
例:デザインレビューで「奇抜」という意見が出た際、「なぜ奇抜に感じるか?」「その奇抜さが新たな価値を生む可能性は?」と深掘りする。
常識や既存枠組みを疑う勇気を持つ: 「これまで通り」で物事を進めずに、時には意図的に既存のプロセスや製品のあり方を破壊する視点を取り入れましょう。
例:主力製品の「当たり前」をリストアップし、「もし全く違う素材だったら?」など問い直すブレインストーミングを行う。
アートとデザインのプロとの対話を深める: 社内外のクリエイターと積極的に対話し、彼らがどのような視点で物事を捉え、何に価値を見出しているのか、積極的に対話しましょう。外部のアート関係者やギャラリーを訪れるのも良い刺激になります。
例:新製品開発の初期段階で、アーティストを交えたワークショップを実施し、自由な発想を引き出す。
アート思考は、単なる美意識ではなく、既存価値を打ち破り、新たな問いを立て、未来を切り拓く強力な思考法です。私たち一人ひとりがアート思考を実践し、「問いを立て、意味を創り、常識を破壊する」ことで、新たなビジネスと文化を創造していきましょう。
記事原案 こず
