現場が創造的だと会社も創造的に 日本企業調査【組織科学】

現場が創造的だと会社も創造的に 日本企業調査【組織科学】

優秀な人材を成果につなげる組織の条件とは?

「優秀な人が社内にいるはずなのに、組織全体では成果が上がらない」
多くの経営者や管理職が抱えるこの悩みに、学術研究が科学的な答えを示しました。

一橋大学の佐々木将人先生らによる共同論文『「組織調査2020」の基本的な発見事実』では、企業人事担当者へのマクロ調査(149社)と、ミドル・マネジャー層へのミクロ調査(710名)の2段階のWebアンケート形式を実施しました。
この調査を通じて、組織の仕組みがどのように個人の心理や行動を変え、最終的にイノベーションを生み出すのかを明らかにしています。

研究が明らかにしたこと

分析の結果、まず注目すべきは「多様性」の力でした。性別や経歴、専門性の異なる人材を受け入れることは、直接的に製品イノベーションを後押しするだけでなく、職場に心理的安全性を生み出し、従業員の自信(自己効力感)を高めることにつながります。その結果、現場では積極的な行動が増え、チーム全体の革新性が高まり、成果へと結びつく好循環が起きるのです。

一方で、部門をまたいだ連携の効果は一筋縄ではありません。営業、開発、人事など他部門の情報や資源を共有し合う取り組みは、調整コストが増え、一時的に効率を下げることもあります。しかし、職場に心理的な安心感があり、従業員が自発的に動けるようになれば、最終的にはイノベーションを促進する力を持つことが確認されています。要するに、部門間の連携は“設計の仕方”次第で、成果を生むかどうかが決まるのです

そして最も重要なのは、日本企業において懸念されてきた「個人は優秀でも組織の成果にはつながらない」という“ねじれ現象”が見られなかった点です。
組織の施策は確かに個人の心理を変え、行動を促し、成果に結びつくという、健全な構造が科学的に証明されたのです。しかし、それは施策の打ち方次第です。経営者や管理職が正しい手を打たなければ、この健全な構造も十分に機能しません。
では、組織と個人の力を最大限に引き出すために、具体的に何をすべきなのでしょうか。

経営者・管理者が現場で活かせるポイント

1.多様性を“戦略資源”に変える
まず、多様性の推進は単なる採用の掛け声で終わらせてはいけません。異なる視点を活かす会議設計や、専門性の異なる人材を組み合わせたチーム編成、インクルーシブなリーダー育成といった文化づくりが不可欠です。つまり、多様性を戦略資源として捉えることが大切です。

2.心理的安全性を高める文化を醸成
次に、心理的安全性を高める取り組みが欠かせません。意見を言っても大丈夫、失敗を学びに変えられる、そんな環境があってこそ、従業員は自信を持って行動し、新しい挑戦に踏み出せます。

3.部門をまたいだ連携は“質と評価”を重視
さらに、部門同士の連携は「やればやるほど良い」というものではありません。むしろ、調整が増えて非効率になることもあります。重要なのは、情報共有の質を高めながら協働の成果を正しく評価し、報酬に反映させる仕組みをつくることです。これが、部門間の連携をプラスに変えるカギとなります。

4.科学的に効果を測り、改善する
そして最後に、こうした施策の効果を測定し続けることが重要です。心理的安全性や自己効力感をサーベイで把握し、イノベーション成果と組み合わせてPDCAを回すことで、組織と個人の好循環を持続させることができるのです。

つまり、多様性を“戦略資源”と捉え、心理的安全性を基盤に据え、水平統合を賢く設計し、その効果を科学的に検証し続ける。
これこそが、成果を分ける分岐点です。

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