ダイバーシティ推進部、意味はあったのか?検証
ダイバーシティ推進部って、本当に意味があるの?ある程度の規模の会社にお勤めの方は、自社のダイバーシティ部門に対してそういう疑問を持たれた方は少なくないのではないかと思います。強制力を持たせて推進していく欧州型のやり方が適切かはさておいて、ダイバーシティ推進部のあるべき型や役割は、日本では微妙な立ち位置となることが多いようです。ダイバーシティ推進部内で働いている人にとっても、自分たちの業務がどうあるべきかについて、悩むことは多いのではないでしょうか。
国立社会保障・人口問題研究所の吉田航先生は、論文「ダイバーシティ部署の設置は企業の女性管理職比率を高めるか?」で、ダイバーシティ部署設置の効果を、女性管理職の増加という観点から検証しています。
研究の結果
吉田先生は、東洋経済新報社が提供する「CSRデータ(雇用・人材活用編)」や「会社四季報オンライン」を活用し、各社の財務情報や、CSR関連の情報、雇用、組織などのデータを集め、様々な要因の影響を統制したうえで、ダイバーシティ部署の設置と、女性管理職比率との関係を分析しました。データは上場企業の中で100人以上の雇用を抱え、かつ上記のデータが十分に収集可能であった会社となり、毎年およそ600-700社がサンプルとなっています。対象とした期間は、2008年-2015年の間です。
分析の前にこの論文では日本の女性管理職の状況やダイバーシティ推進部の状況を確認していますが、驚くべきことに(それとも当たり前の結果でしょうか)、女性役員比率は4.5%にとどまっていました。ダイバーシティ推進部は全体のおよそ4分の1の会社で導入されていました。
そして、注目の分析の結果は、以下のようなものでした。
●ダイバーシティ部門の有無は、全体としては女性管理職比率増大に全く影響を与えていない。
●女性「役員」の割合が多いときには、ダイバーシティ部門は女性管理職比率増大にわずかには効果がある。
●従業員平均年齢が若い会社では女性管理職が増える傾向にある。
●女性従業員比率が高い会社では女性管理職が増える傾向にある。
端的に言って、ダイバーシティ部門の設置は、女性管理職増進にはほとんど効果はなかったのです。
その一方で、会社自体の女性比率が高かったり、比較的に若い人が多い会社であることが、女性管理職の増加には寄与していることがわかりました。
ダイバーシティは、ただの外向けアピールに過ぎなかった?
この結果をどう解釈すべきでしょうか。吉田先生は非常に辛辣なコメントをしています。
「外向けにダイバーシティをやっていますよというアピール」として、少なくとも2008年-2015年頃の日本企業はダイバーシティ部署を作っていたのではないかというのです。
これが事実であるかどうかはまた別途検証しなければならないでしょうが、多くの会社において、思い当たる部分のある話なのではないでしょうか。
●第一には、女性管理職の登用が経営上の効果があることを示すこと。
外向けのアピールとしてダイバーシティをやる…この状態を脱するためには、何が必要か。第一には、女性管理職登用が会社にとって財務や組織など様々な面で効果がある、という客観的な事実を、社会全体としても、あるいは一つの会社の中でも積み上げていかないといけない、ということです。女性管理職登用も、ダイバーシティ推進部の設置も、結局のところそれ自体を目的として動いていることに一番の問題があります。女性管理職が増えて会社に・社会に何がもたらされるのかを、きちんと論じ、エビデンスを積み上げること。この状況を乗り越えるには第一にはこれしかありません。
●ダイバーシティ推進部に適切なKPIを設定し、権限を与えること
女性管理職が大切だ、ダイバーシティが会社にプラスの力をもたらすことが検証された上で、次にはダイバーシティ推進部に適切な権限と責任とを与えていくことです。中途半端な存在として位置付けられても、組織の中では結果を出すことはできません。女性管理職をこれだけ増やし、それを通じて会社の経営状態をどういう常態にする…ということについてKPIを設定し、そのための一定の強制力を部門に持たせないことには、部門として機能しませんし、結果が認められることもありません。
悲しい事には日本のダイバーシティをめぐる実務も研究も、まだこの端緒のステージなのです。事例レベルでも、統計分析でも、ダイバーシティが日本企業に何をもたらすのかは明確にできていないし、望ましい組織やマネジメントもまだまだ未知です。これからの研究が、待たれる領域です。
