Uber Eatsの登場が招いたジレンマ:プラットフォーム企業に潜む「共食い」のリスク
リソースの揺れ動きが生む隠れたコストと実務的示唆
元々ライドシェア事業としてスタートしたUberが2016年にマンハッタンで開始した「Uber Eats」。日本でもおなじみですよね。
一見すると、ライドシェア事業との相乗効果が期待される動きですが、この研究ではその裏に潜む「共食い(カニバリゼーション)」のリスクが明らかにされました。
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のHyuck David Chung先生たちの論文「When Uber Eats its own business, and its competitors’ too: Resource exclusivity and oscillation following platform diversification」によると、Uber Eatsの開始により、Uberライドシェア利用回数が減少しただけでなく、競合のLyftの利用にも大きなマイナス影響を与えました。特に、Uber Eatsに参加するレストランが多い地域では、Uberの利用が平均2.1%、Lyftでは6.4%も減少しています。これは、ドライバーがライドシェアとフードデリバリーのどちらにリソース(車両と時間)を使うかを日々判断しており、結果的にライドシェア側の供給力が下がってしまったためです。
この「リソース・オシレーション=リソースの揺れ動き」は、プラットフォーム企業特有の現象であり、従業員を直接雇っていないがゆえに発生します。企業がドライバーの稼働を直接コントロールできないため、複数のビジネス間で人材が流動し、結果的に元の事業の力を削いでしまうのです。
実務への応用:分野横断のリソース活用には注意が必要
この研究が示すのは、「相乗効果を狙った多角化」が、かえって既存事業を蝕むリスクです。とくに以下のような対策は、実務において有効です。
- 人材や設備を共有する多角化では、供給リソースの偏りが生じないよう設計する。
たとえば、店舗スタッフがECの発送業務も兼務するような場合、店舗の繁忙時間とEC業務のピークが重ならないように、シフト設計を工夫することが重要です。 - プラットフォーム間での切り替えコストを理解し、競合他社の多角化戦略も監視対象にする。
自社プラットフォームに登録しているドライバーが他社のフードデリバリーにも登録しているケースでは、リソースが分散し、結果としてサービス品質の低下を招くおそれがあります。こうした複数プラットフォーム稼働の実態を把握し、競合の動きにも注視する必要があります。 - ピーク需要(例:通勤ラッシュ)を重視したリソース割当設計が、カニバリゼーション緩和に有効。
需要が集中する通勤ラッシュ時などには、リソースの再配分を制限するルールを設けることで、既存事業のパフォーマンス低下を防ぐことができます。たとえば、ライドシェアとフードデリバリーを兼業するドライバーに対しては、ラッシュ時間帯はライドシェアに専念させる仕組みを設けるといった工夫が考えられます。
プラットフォーム企業が新規事業に進出する際は、「リソースの取り合い」による副作用を見落とさないことが重要です。効率性と柔軟性が利点となる一方、適切なマネジメントがなければ、全体の成長を妨げる要因にもなり得るのです。
記事原案 新谷志津乃
