はじめまして。
やさしいビジネススクールの山下です。
やさしいビジネススクールで新規事業開発をはじめ、さまざまな職務に携わりながら、夕方からは社会人大学院生として、授業に行き、研究に取り組む生活をしています。
今回は実務家(ビジネスパーソン)と社会人大学院生、二足の草鞋を履いている私から、論文の使い方をご紹介してみます。
論文とは何か?
そもそも、論文とは何でしょうか?
私なりに定義をしますと、論文とは「アカデミックなルールに基づいた、一定の再現性のある証拠付きの報告書」です。
対して、ビジネス書やネット記事は、おおよそが「著者の経験を基本にした持論」と言えます。
まず明確に強調しておきたいのは、論文、ビジネス書やネット記事のいずれかが優れているという話ではないということです。
仕事や日常を良くするための素材として、自分が納得できるものを選べば良いと思います。
ただ、論文には他の情報源にはない、「3つの圧倒的な特徴」があります。
論文の特徴(ビジネス書との対比)
①アカデミックなルールに基づいたもの
まず、論文には査読(さどく)というフィルターがあります。
その分野の専門家が「論理に破綻はないか」を厳しくチェックし、パスしたものだけが世に出ます。
また、証明方法にも、一定の(あるいは厳格な)ルール、すなわち作法があります。
たとえば「私がこう思ったから」では通りません。
一方、ビジネス書では、「著者がこう思ったから」ということも良しとされ、さまざまな持論が語られています。
②一定の再現性のあるもの
「たまたま上手くいった話」ではなく、他のケースでも言えるのか……。
つまり、今まさにこれを読んでいるみなさまの仕事や会社においても、活用可能なものであることが論文では語られています。
ただ、特定の会社を対象とした論文も多くある(単一事例研究と言われ、当該研究の限界として記されることが多いです)ため、A社に当てはまることが、B社でも当てはまるわけではないので、論文内のすべての知見を転用できるとは限りません。
しかし、①にも述べたように一定の作法に則って出てきた成果であり、おおよそ再現や活用をしやすいものになっています。
ビジネス書でもすべての知見を転用できるわけではないのは同じですが、作法が全くないというのが大きな違いだと思います。
③証拠付きということ
論文での主張には根拠が求められます。
この根拠も、好き勝手に作ってよいわけではなく、一定の作法があります。
たとえばインタビュー。
一口にインタビューといっても、構造化インタビューなのか、思考発話法なのか、グループインタビューなのか、あるいは、エスノグラフィーなのか。
詳細は割愛しますが、ここでも、それぞれの作法や、技法に基づいています。
極端な例ですが「そのとき、うれしい気持ちになったんですよね?辛いというよりうれしいですよね⁉、ね?」などと、圧力をかけながら誘導するようなことは、不適切です。
あたり前ですが、研究者が書く論文というのは、大前提としてこういったものは存在しません。
これらが「アカデミックなルールに基づいた、一定の再現性のある証拠付きの報告書」と言える所以です。
ここから、この報告書の読み方と使い方を紹介していきます。
社会人大学院生としての読み方・使い方
社会人大学院生としての私は、その論文が「自分の研究に寄与するか?」を軸にに据えています(小説を読むように、教養を深めるとか、新聞を読むように、最新の動向をざっくりウォッチするとか、そういう場合もあるので、こればかりではありませんが……)
功利的に読む場合は、以下の順番が多いです。
①概要(サマリー)を読む
ここで「自分に関係があるか」を判断します。
②結論を読みつつ、結果の図表も見る
次に、結論、「ゴールを確認」します。それと並行して、図表も行き来します。
文章以上に重要で、その論文での「研究成果の根幹」ですから、チェックします。
このあたりまでで、自分に関係あるか、ないかがわかります。
重要だと思ったら次に進みます。
③参考文献リストを読む
どういう論文を引用しているかを確認しつつ、自分が読んだことがある論文が含まれているかを確認します。
多数含まれていたら、かなり自分の研究に近いので、読むべきだという判断ができます。
④手法(メソッド)を確認する
私はまだ勉強中の身であるため、わからない手法や数式があれば、チェックしておきます。
時間があれば、その場で調べることもあります。
ここでAIを使うと、理解が深まります。
特に、結果の表を貼付しつつ「手法を解説して」と指示すれば、かなりかみ砕いて説明してくれます。その後、その手法をもう一度専門的な別文献で読み直すこともあります。
この点は個人的には大事にしているポイントで、手法の理解が曖昧だと、結論に至るプロセスを理解したことにならず、自分の研究への活用度合いが半減するためです。
⑤考察を読み込む
著者がその結果をどう解釈したのか、自分の意見とはどう違うのか、あるいは同じなのかを突き合わせます。
⑥イントロダクションを読む
ほとんどの場合、最後に読みます。
「なぜこの研究が必要だったのか」という背景を確認しつつ、最新の動向を追います。自分の研究の文脈と繋げます。
余談ですが、良い研究だと思って取り入れることもあれば、非常に違和感を覚えることもあります。
たとえば私のバックグラウンドは、キャリアコンサルタント資格者です。
そのため、キャリア系の論文は比較的共感することが多いです。
一方で労働経済学系の論文は、真っ向から否定したくなることもあります。
もし論文を読んで疑問や否定が浮かんだ場合、その違和感は大事にしていただいた方が良いと思います。
(やさしいビジネススクール 山下浩輝)
