外向的な人物のほうが、組織では浮きやすい?
人間が一定期間内にできるコミュニケーション量には限界があります。組織の中では、各自はそのコミュニケーション量を適切なメンバーに対して振り分けていくわけですが、積極的に様々なメンバーとコミュニケーションをとる「外向性の高い人物」は、むしろ、日常的なメンバーとのコミュニケーションが減ってしまうことで、組織内で孤立してしまう可能性を秘めています。
外向的な人物ほど、組織内では孤立する可能性がある……。この可能性をコンピュータ・シミュレーションで分析したのが、千葉大学の高橋宏承先生の論文「組織構成員の外向性と組織内孤立の関係性」です。
コンピュータ・シミュレーションによる分析
高橋先生は、組織という空間の中で、40人の構成員がいる状況を分析しました。外向性の高低を制御し、高外向性組織では外向性の高い人と低い人とを30:10で配置し、平均の場合はこれを20:20、低外向性組織ではこれを10:30として、コミュニケーションが行われる様子を観察したのです。すると、興味深いことには、低外向性のメンバーはむしろいつもコミュニケーションをとるメンバー同士で固まり、孤立しない一方で、様々なメンバーとコミュニケーションを取ろうとする高外向性のメンバーほど、その輪に入らない結果として、孤立しがちであることが明らかになったのです。
結果として、外向性の高いメンバーが多く集まる高外向性組織のほうが孤立構成員が生まれやすく、むしろ外向性の低いメンバーが集まる低外向性組織のほうが、孤立者が生じにくいことが分かりました。
高橋先生は、とりわけ「低外向性組織の中の、高外向性メンバー」が孤立しやすいことを突き止めました。シミュレーションの結果を平易な表現で言うなら「メンバーが内向きで、日頃の仲間とだけ付き合うような社風の会社においては、積極的にさまざまな人と交わろうとする人が浮きやすい」ということが明らかになったのです。これに対して、外向性が低いメンバーはいかなる組織常態の中でも、むしろ孤立することなく、「日頃コミュニケーションをする仲間」を見つけて、孤立しないことがわかりました。

いかに外向的な人と内向的な人を融和するか
高橋先生は、この結果から大胆な仮説をすることを学者という立場から避けられておられますが、この結果には私たちは色々考えることがあるでしょう。
・内向的な人が集まる組織は、結果としてまとまりやすい
・内向的な人が集まる組織の中では、外向的な人物が浮きやすい
・外向的な人物が集まった組織では、安定的なコミュニケーションの輪が作られにくくなる
外向性が高いか低いかは、決してどちらのほうがより望ましいのか、ということをここでは意味しません。どちらのタイプも、組織としては必要な人員です。ここで問題なのは、日頃のコミュニケーションの輪ができることと、そこから逸脱して新しいコミュニケーション関係を作ろうとすることを両立するのが、それなりに難しい、ということです。
そして、それを行うことこそが、マネジメントだということです。すなわち、自然状態であれば内向的な人同士で固まってしまう状況で、うまく広がりをそこに持たせること。自然状態であればいつの間にか孤立しがちな高外向性メンバーを、日常のコミュニケーションの輪にも組み込むこと。そうした自然状態への介入こそが、組織を良い常態にするためのマネジメントの役割であり、このジレンマを克服するための手段となります。
さて、高橋先生の研究はシンプルな過程のもとでのコンピュータ・シミュレーションでしたが、より計算能力とAIの発達した現代では、AIで人格を持たせたキャラクター同士がゲーム空間上でどういう交流をするのか、といったより高度な社会シミュレーションが行われるようにもなっています。その中から、どんな知見が得られるのか。コンピュータ・シミュレーションが、今後我々にどんな知見をもたらしてくれるのか、楽しみにしていましょう。
