NPOの承継を統計的に扱った、日本における画期的論文
偉大な創業者が会社を去った後、多くの企業は業績を悪化させることが知られています。「創業者シンドローム」と呼ばれるこの現象ですが、実は同じことはNPOについても起こります。いやむしろ、創業者の強い理念によって作られた組織であるがために、NPOこそ創業者シンドロームが深刻に起こり得る存在だと言えるのです。
関西大学の横山恵子先生たちの論文「NPOにおける事業承継の規定要因」は、大変な労作であり、データとしても非常に貴重なものです。日本のNPO547団体に対するアンケート調査を行い、創業者シンドロームがNPOにおいても発生すること、またそのほかにも様々な承継の結果をプラス・マイナスに作用する要因についても統計的に検証を行ったのです。
横山先生たちの論文では、様々な成果指標について重回帰分析による検証を行い、承継においてNPOの理事組織のあり方がどのような影響を与えるか分析しました。その主な結果は以下の通りです。
●創業者の影響色濃い団体ほど、創業者承継において事業収益や従業員モティベーションなどの観点でダメージが大きかった
●後継者が行政職経験者の場合、事業収益、モティベーション、スタッフ人数などにおいてダメージが大きくなった
●後継者の育成プログラムを事前に用意していたところは、承継を成功裏に行い、収益、モティベーション、スタッフ人数などにプラスの影響が出ていた。
●経常収益を計上できている団体は、承継後に事業収益、モティベーション、スタッフ人数などが改善する傾向にあった。
NPOの承継も、重要な社会問題である
創業者の強い理念で団体が立ち上げられた場合、NPOは深刻な創業者シンドロームに陥ること。それを緩和するうえで、後継プログラムを整えておくことや、組織体の安定運営のために経常収益を上げられるようにしておくことが有用であることなど、本論文はNPO運営についてたいへん重要な知見を授けてくれています。
しかし、それ以上に私たち/社会にとって本論文が価値を有するのは、NPOの承継という課題がそこにあるということを、私たちに気づかせてくれたことかもしれません。経営学の父ピーター・ドラッカーは、非営利セクターの働きがあって今日の社会は成立しており、それなしには維持できないと断じています。しかしそんな非営利組織もまた現代では承継に苦労をしているのだとすれば、そこにもまた、一つの大きな社会課題が存在していると言えるでしょう。
