家族経営のほうが景気悪化時に設備投資を抑制して利益を維持する傾向 日本企業の大規模データ分析より

家族経営のほうが景気悪化時に設備投資を抑制して利益を維持する傾向 日本企業の大規模データ分析より

家族経営と非家族経営で、外的ショックへの対応は変わるか

世の中の会社の大半は家族経営です。日本や米国の上場企業であってもその割合は半数程度に上るとされており、サラリーマン社長のほうが少数であることが、中小企業研究の世界では広く知られています。こうした実態が強調されるにつれ、近年の経営学ではファミリービジネス研究が大変注目されるようになっています。

京都産業大学の沈先生は、論文「家族企業とアントレプレナーシップ」にて、経済的なショックが襲ったときに、ファミリー企業と非ファミリー企業で、どちらがどう対応するのかを比較分析しました。

本論文では、日本政策投資銀行の財務データバンクに掲載されている日本企業を対象に、家族経営と非家族経営に区別したうえで、アジア金融危機およびリーマンショック時の経営状況の変化を分析しました。なお、家族経営が全体の65%、非家族経営が全体の35%となっています。

その結果は以下の通りです。

●アジア金融危機に伴う不況に際しては、家族経営では雇用を守って設備投資を抑制する一方で、非家族経営では雇用を減らして設備投資を維持する傾向がありました。

●リーマンショックに伴う不況では、家族経営・非家族経営とも雇用を減らす傾向にあった。一方、設備投資は家族経営のほうが抑制する傾向にありました。

総じて、家族経営のほうが不況に際して費用抑制を積極的に行うことがわかります。雇用に対する態度がアジア金融危機とリーマンショックで異なるのは、単に時代がそうなった(人々の考え方が変わった)とも言えるし、それ以上の理由もあるのかもしれませんが、本論文から分かることではないため、沈先生は明言を避けています。

総じて、この2回の外的ショックの中では、非家族経営のほうが積極的に費用調整に動き、家族経営のほうが赤字を抑えていた実態が浮き彫りとなりました。

この論文から、考えなければいけないこと:家族経営は、設備投資を抑制して利益を維持する傾向にある

この論文の結果をどう捉えるかは、慎重な議論が必要です。2回の結果から言えることを中立的に述べるなら「外的ショックに対しては、家族経営のほうが非家族経営よりも業績悪化を避けて設備投資を抑制する傾向にある」です。それはつまり、財務的な観点からの組織体の維持という意味では家族経営のほうが穏当なアクションをしているとも言えるが、長期的な成長の観点からは、外的ショックを受けるたびに設備投資が抑制されてしまうということを意味します。

日本の家族経営は外的ショックに際して設備投資を抑制する傾向にあるということが、ここで大切なファクトです。それを踏まえて、どういう経営が自社にとって望ましいのか。私たちはこれを考え、自社に落とし込んで論じる必要があるでしょう。

記事原案 新谷志津乃

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