アクセラレーターはスタートアップの成長に寄与しているのか
アクセラレーターとは、スタートアップが事業の事業成長を促進する役割を担う支援機関のことです。米国ではY Combinatorがその成功事例として知られており、日本でもOpen network labを皮切りに、多数のアクセラレーターが登場するようになっています。
アクセラレーターは、本当にスタートアップの成長に貢献しているのか。とりわけ、日本のようなスタートアップ育成経験が乏しい国では、アクセラレーターがその社会的機能を果たせているかどうかには疑問の目が向けられてきました。九州大学の内田大輔先生たちの論文「アクセラレーターによるスタートアップの育成」では、この疑問にこたえるべく、統計的な調査からアクセラレーターの支援効果を検証しました。
この論文では、アクセラレーター38社が2010年度から2019年度の間に開催したアクセラレーションプログラムに参加したスタートアップ813社を対象に、【資金調達】を成果指標としてプログラムの効果を分析しました。その結果は以下の通りです。
・全体としては、プログラム終了後のスタートアップの資金調達額は、アクセラレーターの経験(過去の支援先数)が多いほど、わずかではあるが増大する傾向が観察された
・スタートアップが成長ステージの前半にいるうちは、経験あるアクセラレーターの支援が資金調達に強く寄与することがわかった
・スタートアップの成長ステージが後半になると、アクセラレーターの経験値の効果は小さくなった(それでもプラスの効果は存在していた)
総じて、アクセラレーターは日本においても資金調達において一定の効果を持っており、支援は確かに役に立っていることが示唆されました。とりわけ、まだ事業モデルや製品が固まっていない初期のうちは、アクセラレーターが貢献できる割合が大きいことが明らかになりました。
ただし、ここで問題もあります。売り上げを伸ばしたり、製品・サービスを改良したり、組織を整えたりといったスタートアップ経営の別の側面に対してアクセラレーターが貢献できているかどうかは、本論文の射程外ですから、未解明のままです。
また資金調達という面においても、論文中で行われているアクセラレーター個社を単位とした追試からは、スタートアップの前半ステージについては経験の蓄積が確かに支援能力を高めている一方で、スタートアップの後半ステージについては経験はむしろ資金調達にマイナスの影響が出ているとの分析結果が出ています。
総じて、この研究の成果からは、「アクセラレーターはスタートアップのステージ前半においてのみ、豊富な経験を生かして、資金調達については貢献できていることが示される」ということが言えるでしょう。
アクセラレーターは、創業初期の資金調達に有用である
これは多くのスタートアップやアクセラレーターに携わられる方にとって直観に合致するものではないかと思います。初期段階の右も左も分からないときに、アクセラレーターによって資金調達までこぎつけられた、という話はよく聞かれることです。ひるがえって、それ以上のかたちでアクセラレーターが貢献できるかどうかは、今後日本のアクセラレーターがどんな能力を構築してくれるかにかかっているのかもしれません。
