人材が流出するのに新知識が入ってくる? リバース・ナレッジ・フローとは

人材が流出するのに新知識が入ってくる? リバース・ナレッジ・フローとは

人材が流出して知識が入ってくる?リバース・ナレッジ・フローとは

リバース・ナレッジ・フロー。知識をもった人材が外部流出することで、逆に、その人物を経由して外からの知識が組織に流入する現象です。これまで聞いたことのなかった言葉だと思いますが、昔から研究や技術開発ではそうした現象があることが知られてきました。

一橋大博士課程の横田一貴先生は、論文「発明者の組織間移動」で、この現象の存在を実証し、それが企業の技術開発にプラスの影響を与えていたことを明らかにしました。

横田先生は、2005年から2014年までの日本の半導体産業、全21万件以上に上る特許データを分析するなかで、リバース・ナレッジ・フローが発生していたことを突き止めます。4715人にものぼる転職者の移動効果を分析し、人材が移動するほどに、その2企業間での交流が生まれたり、転職先の状況を参照する可能性が高まり、(違法な社内技術情報の流出ではない形で)元の組織に新しい情報がもたらされ、特許創出力が高まっていたことが示されたのです。

ただし、その効果が得られるのには前提があります。転職者が元の所属先との間で良好な関係を維持していることです。当然ながら、喧嘩別れしたような場合には、転職者は旧所属先にメリットをもたらすようなことはしません。

結果として、全てのケースを含んだトータルとしての転職者がもたらすリバース・ナレッジ・フローは決して大きいものではなく、転職者を伴わずとも直接的に実施された共同研究や、2社の技術的な距離の近さ(お互いに相手の動向をチェックしている)が、新しい特許の創出により効果を持っていました。

何より、日本の半導体産業において、そもそも転職者の割合がごく少なく、この人材の固定化が新しい分野への進出を割合としてごく少なくしていることも、筆者は指摘しています。

リバース・ナレッジ・フローを経営に生かすには

みなさんのよき同僚が別会社に移動したとき、移動先のことを聞いたりすることはイメージできるはずです。リバース・ナレッジ・フローとはつまりこのこと。決して法に触れるかたちや相手の企業秘密に迫るわけでもなく、それでも新しい知見が個人間でやり取りされ、元の組織に新奇な発想をもたらす。

だとすれば、リバース・ナレッジ・フローを促進する鍵は、やはり円満な退職(転職)にあります。人材が他社に移ることは、その人なりのキャリア方針がある以上、企業としては引き止められません。それを快く許容し、転職後も関係が続くようにすることで、貴社の「卒業生」(アルムナイ)たちは会社に新しい情報をもたらしてくれるようになるでしょう。

記事原案 新谷志津乃

コメントを残す