ホワイトスペース探しの新手法、ビジネスモデル囲碁
新しいビジネスモデルを、どう構築するか。慶應義塾大学の岩尾俊兵先生は、ビジネスモデル囲碁という新しいアプローチを提案しています。論文「ビジネスモデル再訪:研究不可能性問題と「ビジネスモデル囲碁」」では、企業のなかで実際に使った事例を報告し、その使い方を解説しています。
ビジネスモデル囲碁の実践法
ビジネスモデル囲碁とは、ある事業領域において、既存企業はどのあたりが手薄であるかを視覚的に分析可能とする手法です。まだ既存企業が進出していない領域を探す「ブルーオーシャン戦略」をより洗練させた手法と言えるでしょう。
ビジネスモデル囲碁ではまず、ビジネスを行いたい領域(産業・業界・市場)を大まかに決定します。次に、その領域において、既存企業が注力している競争要因を列挙し、重要なもの5~9個程度まで絞り込みます。その後、これらの競争要因への注力度合いを5段階で主観的に評価して、黒丸の数で表現します。この作業を通じて、既存企業がまだ注力を十分にしていない事業のかたちが、おのずと見えてくることになります。
岩尾先生はここでファストフード業界におけるビジネスモデル囲碁作成例を提示しています。コスト競争力、メニューの豊富さ、満腹度、ヘルシーさ、食べ放題、提供スピード、ドライブスルーの有無、座席の快適さ、店舗の広さなどが競争要因として挙げ、それを既存の有力企業について評価をしています。

こちらを見れば、ヘルシーメニューで食べ放題を提案し、くつろぎやすい座席があるようなお店は既存店にはなく、ここが新しい事業として狙っていくべき方向であると考えることができるのです。
手法に留まらないアカデミア連携の可能性
手法としてごくシンプルで使いやすいビジネスモデル囲碁は、ぜひ皆さんにも一度使ってみてもらいたいものです。そこからは、新しい事業のヒントが見つかってくるでしょう。
岩尾先生はまた、本論文を通じて、学者がこうした手法を提唱し、かつ「実務の中で、実務家と一緒に実践していく」ことの大切さも唱えられています。より現実社会とつながりを学者がもつこと—実務サイド目線から見れば、学者の知見や能力を積極的に活用しようとすることで、単に手法提案に終わるのではなく、それを使った価値創造につながっていくはずだと。
確かに、この手法だけを受け取って終わりにするか、それともこうした手法とともにその学者を巻き込んでいくのかでは、その後の価値創造の方向性は大きく変わってくるかもしれません。単に本論文を手法の提案としてだけ消化するよりも、こうした意識をもつ研究者も少なからずいて、実務との協業を望んでいることを知る機会とするなら、今一歩、学術論文を意味あるかたちで消化できたといえるかもしれません。
記事原案 M.Sumida
