商品名の決め方|消費者心理から考える選ばれやすいネーミングの4つのポイント

商品名の決め方|消費者心理から考える選ばれやすいネーミングの4つのポイント

商品名は、商品の特徴を伝え、顧客の記憶に残るための重要な接点です。しかし、わかりやすさ、覚えやすさ、印象の強さのうち、何を優先すべきか悩む企画・販促担当者は少なくありません。

近年の研究では、商品名と顧客自身の名前とのつながりが、商品選択に影響する可能性も示されています。北海道の生協の購買履歴を分析した研究では、太田姓の顧客は、ほかの名字の顧客よりも太田胃散を購入した割合が統計的に高いことが確認されました。

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このように、実際の購買記録に基づく研究結果は、商品名を考えるうえで有力な手がかりになります。本記事では、商品名を決める4つの評価基準と、自分の名前と同じ文字に無意識の親近感を抱くネームレター効果について、実務の視点から解説します。

商品名を決めるときに確認したい4つのポイント

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商品名に絶対的な正解はありません。だからこそ、あらかじめ候補を評価する基準を設けておくことで、社内の好みや感覚だけで決定するおそれを減らせます。

1.商品の価値とイメージの伝達

商品名には、それが何であるかを説明するだけでなく、商品の特徴やブランドの印象を想定顧客に直感させる役割があります。

たとえば、越後製菓のふんわり名人は、軽くやわらかな食感を想像しやすい名前です。実際に、口の中でふわっと溶ける食感が特徴で、子どもから高齢者まで幅広い世代に親しまれています。ひらがな中心の表記も、幅広い年代が親しみやすい、やさしい商品の印象と合っています。

このように、商品名を考える際は、単に商品の特徴を表しているかだけでなく、想定する顧客にどのような印象を持ってもらいたいのかまで考えることが重要です。

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2.記憶しやすさと伝達性の重視

商品名は、顧客が理解できるだけでなく、口コミや検索を通じて、ほかの人に伝えやすいことも重要です。 

次のような名前は、記憶や検索の妨げになる可能性があります。

  • 初めて見たときに読み方がわからない
  • 名前が長すぎて記憶に残りにくい
  • 発音しにくく、口に出しづらい
  • 音だけでは漢字や英字の表記を想像しにくい
  • 類似した商品名が多く、ほかの商品に埋もれやすい

候補を評価する際は、文字で見るだけでなく、実際に声に出して確認する方法が有効です。

担当者が読み上げた名前を、別の人に文字で書いてもらう方法もあります。聞いた音と実際の表記に大きな違いがある場合、インターネット検索や口コミで不利になる可能性があります。

単に短く簡単な名前にすればよいわけではありません。想定顧客にとって理解しやすく記憶に残るかどうかが重要です。 

3.他社商品との明確な差別化

わかりやすい名前でも、競合商品と似ていれば記憶に残りません。また、一般的な言葉だけで構成された名前は、ネット検索時に無関係な情報に埋もれる危険性もあります。

ネーミングの候補が決まったら、以下の項目を確認しましょう。

  • 検索エンジンで同じ名称のサービスが存在しないか
  • 同じ業界に類似した商品名がないか
  • 主要なSNSのアカウント名として同一のIDを確保できるか
  • Webサイトのドメインを取得できるか
  • 既存の商標を侵害していないか

商標については、特許情報プラットフォームのJ-PlatPatで検索できます。ただし、簡易検索だけで商標トラブルを防ぐのは困難です。長期的に育成するブランドや重要な商品名は、必要に応じて、弁理士などの専門家への相談も検討するとよいでしょう。

4.自分事化を促す親近感の設計

商品名では、商品の特徴を伝えたり、覚えてもらったりするだけでなく、顧客が自分とのつながりを感じられるかという視点もあります。

その心理を考えるうえで参考になるのが、自分の名前に含まれる文字を好意的に評価するネームレター効果です。商品名に自分と関係のある文字が含まれていることで、商品やブランドへの親近感が生まれ、選択を後押しする可能性があります。

ネームレター効果が商品選択を後押しする仕組み

Nuttin(1985)は、人が自分の名前に含まれる文字を、それ以外の文字よりも好意的に評価する傾向を明らかにしました。

また、Jonesら(2002)は、この背景に、自分自身に対する肯定的な感情が、名前を構成する文字にも広がる心理があると説明しています。そのため、自分の名前と同じ文字を含む商品やブランドにも、無意識の親しみを感じやすくなる可能性があります。

ただし、実際の商品選択には、価格や品質、ブランドの知名度、広告、パッケージ、店頭での陳列など、多くの要因が影響します。

ネームレター効果は、それだけで売上を左右する万能な法則ではありません。複数の商品で迷ったときに、選択を後押しする親近感の一つとして捉えるのが実務的です。

太田さんは太田胃散を選びやすいのか

外川ら(2023)は、ネームレター効果が実際の購買行動に現れるかを検証するため、コープさっぽろで胃腸薬を購入した1万5,967人の購買履歴を分析しました。

顧客を、漢字と読み方が一致する太田姓、読み方は近いが表記が異なる大田・多田姓、その他の名字に分け、太田胃散の購入割合を比較しています。その結果、太田胃散を購入した割合は、太田姓で49%、大田・多田姓で32%、その他の名字で34%でした。太田姓の購入割合は、ほかのグループより統計的に高い数値です。

一方、大田・多田姓とその他の名字の間には明確な差が確認されませんでした。このことから外川ら(2023)は、漢字の商品名では読み方だけでなく、自分の名字と同じ文字を見ることが親近感につながった可能性を示しています。この研究は、アンケートではなく、実際の購買履歴を分析している点に特徴があります。

名字と商品名の一致が購買に与える影響や、この効果をマーケティングに活用する視点は、以下の解説記事で分かりやすく説明されています。

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ネームレター効果をマーケティングに活かす3つの方法

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外川ら(2023)の実証データから、商品名や顧客への働きかけ方に顧客の名前を掛け合わせる手法が、有効な戦略になり得ることがわかります。

ここからは、ネームレター効果をマーケティングに活かす3つの方法を紹介します。

ターゲット層における名前の出現率の確認

創業者の名字を企業名やブランド名に使うケースは珍しくありません。外川ら(2023)は、人名をブランド名に採用する際、その名字を持つ人がターゲット層にどのくらい存在するのか事前に調べておくことの重要性を指摘しています。ただし、単にありふれた名字を使えば売上が伸びるというわけではありません。人名を起用する場合には、以下の条件を総合的に確認する必要があります。

  • 商品の特徴や背景と人名に関係があるか
  • 名前の由来をストーリーとして説明できるか
  • ターゲットにとって読みやすいか
  • 競合ブランドと区別できるか
  • 商標として使用できるか
  • 海外で問題となる発音や意味がないか

人名との一致は、ネーミングを決める唯一の基準ではなく、顧客との心理的なつながりを評価する一つの視点です。

顧客の名字に合わせたパーソナライズ販促の検証

会員システムに顧客の名字が登録されており、自社の商品に人名を含むブランドがある場合、名字とブランド名が一致する顧客に限定した販促施策を検証できます。

たとえば、太田姓の顧客に太田胃散のクーポンを配信したり、名字と同じ文字を含む商品をECサイト上で優先的に表示したりする方法です。

外川ら(2023)も、顧客の名字と一致するブランドのクーポンや販促物を届ける方法を、実務への活用例として挙げています。具体的には、次のような施策が考えられます。

  • ECサイトのマイページで対象商品を提案する
  • 顧客の名字に応じてメールマガジンの商品内容を変える
  • アプリで対象商品の限定クーポンを配信する
  • DMを送付する顧客を絞り込む
  • 特定の名字を持つ会員向けのキャンペーンを実施する

ただし、名字を販促に利用していることを強調しすぎると、顧客に不信感やプライバシーへの懸念を抱かせる可能性があります。
個人情報の利用目的やプライバシーポリシー、社内の管理ルールを確認したうえで、まずは対象を限定したA/Bテストから始めることが重要です。

名入れ加工や個別対応への応用

顧客自身の名前そのものを商品やパッケージに刻印するアプローチは、自分とのつながりを最もダイレクトに生み出せる方法です。

外川ら(2023)も、近年の必要な分だけ印刷できる技術や加工技術の進歩を踏まえ、名入れを含むパーソナライズへの応用を提案しています。具体的には、以下のような商品やサービスでの展開が考えられます。

  • 名前をレーザー刻印できる文房具や日用雑貨
  • 特別な記念日のための名入れギフト
  • 自分の名前やニックネームを印刷できる飲料ボトル
  • イニシャルを選択できるアクセサリー
  • ログイン状態に応じて表示名やおすすめ商品を変えるECページ

ただし、顧客が名入れ商品を選ぶ背景には、ネームレター効果だけでなく、ギフトとしての特別感や世界に一つだけという希少性の心理も作用しています。純粋なネーミングによる親近感の効果を確認したい場合は、名入れ加工をした商品としていない商品で、購入率、客単価、リピート率にどれほど違いが出るかをデータで追跡・検証することをおすすめします。

商品名を決めるための5つの実務ステップ

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ここまで紹介したネームレター効果は、商品名を考える際の一つの視点です。実際の商品名は、この効果だけでなく、商品の価値や覚えやすさ、競合との差別化なども含めて決定する必要があります。ここからは、商品名を決める具体的な手順を整理します。

ステップ1. 商品名が担う役割の決定

最初に、その名前が何を表すのかを明確にします。個別商品名、ファミリーブランド名、サービス全体の名称のどれを指すかで、適切な言葉は異なります。

ステップ2. ターゲットと提供価値の言語化

候補を出す前に、誰に、何の価値を提供するのかを整理します。商品カテゴリーや顧客の悩み、利用後の変化などを書き出しておきましょう。

ステップ3. 異なる方向性の候補の複数作成

最初から一つに絞らず、機能訴求型、情緒価値型、音重視型、ストーリー型など、方向性の異なる候補を作成して比較します。

ステップ4. 実用場面と権利関係の事前確認

パッケージへの配置や検索状況、SNSアカウント、商標(J-PlatPat)を調査します。聞き間違えやすい言葉がないかも確認します。

ステップ5. 顧客調査やA/Bテストによる検証

商品名を社内だけで決定せず、想定顧客にA/Bテストという2つの案を提示して反応を比較する方法で候補を提示し、どのように受け止められるかを確認します。

可能であれば、実際の広告やECサイトで複数の案を比較し、クリック率や購入率などの行動データも確認するとよいでしょう。

商品名を決めるときに避けたい4つの失敗 

1.わかりやすさだけを優先する 

商品の特徴を直接表す名前は一瞬で理解されるメリットがある反面、一般的すぎると競合の中に埋もれてしまい、独自のブランド資産になりにくいというトレードオフがあります。

手軽さが求められる日用品ではわかりやすさが大きな武器になりますが、高価格帯のブランドやサービスでは、機能を説明するよりも、あえて抽象度の高い名前で独自の世界観やストーリーを演出するアプローチが効果的です。市場のポジションやターゲットの性質に応じたバランス感覚が求められます。

2.短ければよいと考える 

短いネーミングは、発音しやすく記憶に定着しやすいという利点があります。
しかし、短さを追求するあまりメッセージ性が完全に削ぎ落とされてしまったり、インターネットで検索した際に別ジャンルの一般名詞と競合して検索順位が上がりにくくなったりしては本末転倒です。単なる文字数のコンパクトさだけでなく、ネーミングに込める情報量とのバランスを常に見極める必要があります。

3.ネームレター効果を売上の法則として使う 

外川ら(2023)の研究データは非常に強力な知見ですが、この分析は特定の地域、特定のドラッグストアチェーン、そして胃腸薬という条件下で行われたものである点に留意する必要があります。
そのため、自社のターゲットに多い名字を冠すれば無条件に売上が増えるというような、安易な方程式として捉えるべきではありません。商品そのものが持つ本来の提供価値や、覚えやすさといった基本要件を満たしたうえで、最後の一押しとしてこの心理効果を組み込むのが実務的です。

4.創業者名を安易に採用する 

ブランドに人名を採用することは、企業の歴史や職人のこだわり、品質への責任を表現する有効な方法です。
一方で、初めて商品を知る顧客に具体的な価値が伝わりにくい、海外では発音しにくい、将来異なる事業へ展開する際にブランド名が制約になるといった問題もあります。

目先の話題性や印象の強さだけで判断せず、10年後に展開する事業や、ほかのブランドとの関係まで見据えて決めることが重要です。

まとめ|商品名は顧客との心理的な接点にもなる

商品名を決める際は、複数の基準から候補を評価することが重要です。特に確認したいのは次の4点です。

  • 商品の価値とイメージが伝わるか
  • 覚えやすく、読みやすく、伝えやすいか
  • ほかの商品と区別できるか
  • 顧客が自分とのつながりを感じられるか

外川ら(2023)の研究では、太田姓の顧客は太田胃散を購入した割合が高いという結果が示されました。漢字の商品名では、音だけでなく見た目の文字も顧客の反応に関係する可能性があります。

こうした実証データは、日々のマーケティング戦略や企画書に強い説得力をもたらします。しかし、実務の合間に難解な学術論文をいちから読み解くのは簡単ではありません。

そこで、論文ニュースでは、マーケティングや消費者心理をはじめとする研究を、専門知識がなくても理解しやすい形で紹介しています。根拠に基づく販売戦略を立てたい方や、企画に説得力を持たせたい方は、ぜひ参考にしてください。

参考文献

  • 外川拓・磯田友里子・鈴木凌・恩藏直人(2023) 顧客の名字がブランド選択に及ぼす影響―視覚情報としての文字に注目して― マーケティングジャーナル 42巻3号、27-38頁。
  • Jones, J. T., Pelham, B. W., Mirenberg, M. C., and Hetts, J. J.(2002) Name letter preferences are not merely mere exposure: Implicit egotism as self-regulation. Journal of Experimental Social Psychology, 38巻2号, 170-177.
  • Nuttin, J. M.(1985) Narcissism beyond Gestalt and awareness: The name letter effect. European Journal of Social Psychology, 15巻3号, 353-361.

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