ダイバーシティ経営を支える感謝の力 実証

ダイバーシティ経営を支える感謝の力 実証

2,600人の調査で判明「感謝」の意外な効果

東京大学の正木郁太郎先生と村本由紀子先生は、論文「性別ダイバーシティの高い職場における感謝の役割:集合的感謝が情緒的コミットメントに及ぼす効果」のなかで、「感謝」という日常的な行為が、職場での人間関係やチームのまとまりにどんな影響をもたらすのかを探りました。特に、男女比のバランスが取れた、いわゆる“性別ダイバーシティ”の高い職場に注目し、感謝の文化がどのように働くのかを検証しています。

これまで、感謝は個人の心の動きとして扱われることが多く、職場全体で感謝がどう共有され、どんな雰囲気をつくるのかまでは十分に研究されてきませんでした。また、性別や価値観の異なる人が集まる職場では、コミュニケーションのすれ違いが起きやすく、一体感をどう維持するかが課題とされてきました。そこで正木、村本両先生は、感謝という日常的な行為が、多様な人々を紡ぐのではないかと考えました。

本研究の仮説は以下の2点です。
1.職場全体に感謝が多く交わされているほど、従業員は職場に愛着を感じるのではないか。
2.その効果は、性別ダイバーシティが高いほど強くなるのではないか。

調査は、製造業5社の43部署(計2667人)を対象に行われ、オンラインの質問紙でデータを収集しました。分析では「感謝される経験」「職場全体での感謝の雰囲気(集合的感謝)」「性別ダイバーシティの度合い」などを数値化し、個人レベルと職場レベルの両方から関係を検討しました。

結果として、感謝されることが多い人ほど職場への愛着が強く、そして感謝が多く交わされている職場ほど、全体としての一体感(情緒的コミットメント)が高いことがわかりました。

特に注目したいのは、性別ダイバーシティが高い職場では、この集合的感謝の効果がより強く現れた点です。

集合的感謝は、アンケートにおいては「仕事がすんだときに、上司や同僚からねぎらいや感謝の言葉をもらう」という項目(よく経験している~あまり経験していないの4件法)で測定しました。
このスコアと性別ダイバーシティーとの交互作用が統計的に有意に示されたということです。

感謝の文化が心理的安全性を高める鍵

多様な背景を持つ人たちが働く環境では、感謝が人と人を結びつけ、信頼関係を築く心理的な橋渡しのように働いていました。
調査結果から、感謝は単なる礼儀やマナーではなく、組織文化として共有されることでダイバーシティを支える重要な要素になることが示されました。

こうした知見を踏まえ、サンクスカードや表彰制度など、感謝を可視化する仕組みを導入することが、ダイバーシティ推進や働きやすい組織づくりに有効だと述べています。感謝の文化を根付かせることは、心理的安全性を高め、異なる背景を持つ人々が安心して協働するための鍵になり得るのです。

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