非営利組織 受益者への説明責任を果たしているのは全体の約56%と推定

非営利組織 受益者への説明責任を果たしているのは全体の約56%と推定

非営利組織は受益者に説明責任を果たしているか

顧客や取引先などのステークホルダーに対して、企業は事業活動の成果や今後の見通しなどを丁寧に説明する責任があります。企業に説明責任があることは広く認識されていますが、それでは非営利組織においてはどうでしょうか。非営利組織は行政や寄付者からの資金提供を受けて受益者へサービスを提供しますが、資金提供者ではない受益者への説明責任は、十分に果たされているのでしょうか? 

神奈川大学の尻無濱芳崇先生らの研究グループは論文「非営利組織の受益者に対する説明責任ー質問票調査による規定要因の分析」で、従来十分に検証されてこなかった非営利組織の受益者に対する説明責任の実態と、そこで説明されている内容がいかなるものなのかについて調査を行いました。

その結果、NPOのサービス受領者への責任ある説明は、現時点でおよそ半数程度にあたる55.9%で行われており、まだまだその説明責任という考え方が広く行き渡っているわけではないことが分かりました。また、その説明内容の充実度は、組織の規模に拠らず、受益者をただしく説明対象と認識しているかという点に左右されることが明らかになりました。

認定NPO法人を対象とした質問票調査と分析

この研究では、日本の認定NPO法人1,170法人の質問票調査で回収した回答のうち、分析に必要なデータがすべて揃っている222法人のデータを用いています。そして、各組織が受益者に対してどのような内容を、どのような手段で説明しているかをデータとして集計しました。さらに、その説明責任の果たし方に影響を与える要因(活動領域、組織の規模、受益者に対する認識)を明らかにするため、ロジスティック回帰分析という統計手法を用いた検証を行っています。

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規模は無関係。鍵は説明対象としての認識

調査の結果、受益者を説明責任を果たす相手として認識している非営利法人は、全体の55.9%と半数以上を占めました。この数字が多いか少ないかについては判断は分かれますが、全体の半数強が説明責任を果たしており、半数弱程度は果たしていない、という現状であることをまずは報告しておきたいと思います。

また、受益者への説明内容としては業務活動の具体的内容(75.7%)が最も多く、説明手段としては成果や状況を説明する文章(68.9%)が最も重視されていることがわかりました。

本研究ではさらに、統計分析を通じて、受益者への説明内容や手段に影響を与える要因が明らかになりました。

一つは、どんな活動領域に携わっているかによって、重視する説明内容や手段が変わるということです。たとえば環境保全に携わる法人は、受益者に対して資金の使用成果を説明することを重視する傾向がありますが、子どもの健全育成にかかわる法人は、説明手段として財務諸表を重視しない傾向があります。

また、組織の規模(人やお金のリソースの大きさ)は、説明責任の果たし方に影響を与えていないことも明らかになりました。説明内容と手段を充実させる最も強い要因は、組織が受益者を説明責任を果たすべき相手として明確に認識しているかどうかでした。

受益者との対話がもたらす活動の「正当性」

本研究が明らかにした非営利組織の受益者に対する知見は、NPOセクターに留まらず、営利企業の社会貢献活動(CSR)をより価値あるものにするための重要なヒントを提示しています。

たとえば、地域貢献やボランティアを行う企業において、その対象となる地域住民や学生といった「受益者」を、単なる活動の受け手ではなく、説明責任を果たすべき重要なステークホルダーとして捉え直してみてはいかがでしょうか。論文では、受益者へ活動を説明し理解を得ることは、その組織や活動の「正当性」を高め、周囲からの信頼を獲得する鍵になると述べられています。

「なぜこの活動を行うのか」「どのような成果があったのか」を受益者に直接説明し、対話を深める。こうしたプロセスは、サービスの質を改善させる効果があるとも指摘されています。単なる表面的なPRに留まらず、イメージアップを超えた真の社会貢献を実現するために、まずは身近な活動における「受益者」を再認識し、彼らへの誠実な説明責任から始めてみることが、活動の質を本質的に高める一歩となるはずです。

イメージアップを超えた真の社会貢献を実現するために、まずは身近なボランティア活動における真の受益者を再認識し、彼らへの説明責任を果たしてみてはいかがでしょうか。

記事原案 東莉子

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