人事業務の生成AI活用は何から始める?手薄な仕組みを補う4つの使い方

人事業務の生成AI活用は何から始める?手薄な仕組みを補う4つの使い方

「その手続きは、担当の○○さんに聞いてください」

社内で、こんなやり取りが繰り返されていませんか。

休暇や異動の手続きは、詳しい担当者が不在だと回答が止まる。新入社員の育成は、配属先の上司任せ。人事制度を整えても、現場への説明やフォローまでは手が回らない。

こうした状況で生成AIの活用を考えても、「まず社内の仕組みを整えてからでは?」と感じるかもしれません。しかし、情報整理や説明資料の作成など、今ある仕組みを動かす作業から使い始める方法もあります。

この記事では、人事業務の手薄な部分を見つけ、生成AIで補う4つの使い方と、小さく導入する手順を紹介します。

人事の生成AI活用は、どこで仕事が止まるかから考える 

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人事業務を効率化しようと言われても、何から手をつければよいか迷うものです。まずは、普段の仕事で誰かが立ち止まる場面を探してみましょう。

たとえば、引っ越し後の住所変更について、社内のルールは決まっているとします。しかし、案内が複数の資料に分かれていて、従業員は次のような点で迷っています。

  • どの申請画面を開けばよいのか。
  • 住所を変更すれば、通勤経路も一緒に変更されるのか。
  • 手続きについて困ったら、誰に聞けばよいのか。

この場合は、既存の資料をもとに、生成AIで引っ越し後の手続きをまとめた案内を作る方法が考えられます。人事担当者が内容を確認して共有すれば、従業員が自分で手続きを進める助けになります。

ただし、会社として通勤経路の変更手順が決まっていないなら、先に担当者が確認する必要があります。生成AIが書いた手順を、そのまま会社のルールにはできません。

すでに決まっていることを整理するのか、それともこれから決める必要があるのか。 この二つを分けると、AIに任せる作業が見えてきます。

手薄な人事の仕組みを補う、生成AIの使い方4選

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1.何度も聞かれる質問を、よくある質問集にする

住所変更の申請先、申請書の提出方法、通勤経路が変わる場合の手続き。同じような質問が届くたびに、人事担当者が資料を探し、回答を入力している。

そんな場合は、回答をよくある質問集、いわゆるFAQにまとめるところから始められます。

たとえば、会社で利用が認められた生成AIに、社内の手続き案内を示して、次のように依頼します。

この資料をもとに、引っ越しをした従業員向けの、よくある質問と回答の案を作ってください。最初にすること、申請先、問い合わせ先がわかるように整理してください。資料に書かれていないことは推測せず、担当者への確認が必要な事項として分けてください。

作成された案をもとに、人事担当者が回答や参照先を確認します。完成した質問集を社内で見つけやすい場所に置けば、詳しい担当者が不在でも、従業員が必要な情報にたどり着きやすくなります。

最初から自動応答の仕組みを作る必要はありません。まずは、一枚の案内や社内ページにまとめる方法もあります。

もちろん、すべての質問を質問集で解決できるわけではありません。標準的な手順では対応できない事情がある人のために、個別相談の窓口も記載しておきます。

2.難しい制度の説明を、身近な言葉と記入例で補う

今期の目標を具体的に書いて提出するように言われ、目標シートを開いたものの、仕事を頑張るとしか思い浮かばない。上司に相談しても、できるだけ数字で書くように言われ、さらに困ってしまう。

目標設定は、こうした行き違いが起こり得る場面です。

人事側は制度を説明したつもりでも、従業員が知りたいのは、自分の仕事なら何をどう書けばよいのかということかもしれません。

そこで、正式な制度資料をもとに、生成AIで説明文や記入例の案を作ります。

この目標設定のルールを、初めて目標シートを書く社員にもわかるように説明してください。営業事務の仕事を例に、曖昧な目標と、それを具体的にした目標を示してください。制度にない評価基準は追加しないでください。

たとえば、説明用の案として、次のような書き換えが考えられます。

曖昧な目標行動が見える目標の例
引き継ぎをしっかりする月末までに受注処理の手順書を作り、同僚に試してもらって、わかりにくい箇所を修正する
チームへの情報共有を頑張る毎週の打ち合わせで、担当業務の進捗と困っていることを共有する

こうした例があると、具体的な目標の書き方をイメージしやすくなります。

ただし、この例がそのまま評価対象として適切かどうかは、会社の制度や本人の役割によって変わります。人事と上司が内容を確認し、従業員が例文を丸写しするのではなく、自分の仕事に置き換えられるようにします。

生成AIは、制度と日々の仕事の間にある、説明の足りない部分を補うために使うのです。

3.新人に教えた内容を、共通の確認表にする

さて、またここから一つ、シチュエーションの紹介です。

電話が鳴ったので、新入社員が受話器を取る場面を想像してみましょう。ところが、営業担当者への取り次ぎを頼まれたところで、転送の仕方がわからず固まってしまいます。

先輩の一人は、電話の取り方はもう教わっていると思っていました。別の先輩が教えたのは、メールの使い方だけでした。

誰かが怠けていたわけではなくても、教える内容が共有されていなければ、こうした抜けが生まれます。

そこで、業務マニュアルや教育担当者のメモをもとに、生成AIで新人向けの確認表を作ります。

この資料をもとに、新入社員に教える内容を確認表にしてください。説明を受けた、一緒にやってみた、一人でできた、の3段階で確認できる形にしてください。資料にない手順は追加せず、不明点として分けてください。

たとえば、次のような形です。

教える内容説明を受けた一緒にやってみた一人でできた
電話を受け、相手の名前と用件を確認する
担当者へ電話を取り次ぐ
担当者が不在のときに伝言を残す
わからないときの相談先を確認する

一度説明を受けたことと、一人でできることは同じではありません。この違いを見えるようにすると、次に何を一緒に練習するかを話しやすくなります。

確認表は、本人を責めるためのものではなく、教え漏れや支援が必要な点を見つけるために使います。実際の電話対応や仕事内容に合っているかは、現場の担当者が確認します。

まずは電話対応や社内システムへの入力など、一つの仕事に絞って試すと、取り組みやすいでしょう。

4.ばらばらに届く相談から、共通する困りごとを見つける

研修の案内がどこにあるかわからない。申し込みの締め切りを見落とした。上司の承認が必要だと、申し込む直前に知った。

人事に、こうした問い合わせが届いたとします。

一件ずつ読むと、別々の質問に見えます。しかし、並べてみると、研修案内の出し方や申し込み手順に、わかりにくい点があるのかもしれません。

そこで、社内ルールに従って利用できる範囲の問い合わせを、生成AIで整理します。

次の問い合わせを、困っている内容ごとに分類してください。それぞれについて、案内文の改善で対応できそうなことと、担当者による個別確認が必要なことを分けてください。記録からわからない原因は断定しないでください。

整理した結果を見て、人事担当者が元の内容を確認します。そのうえで、研修案内の冒頭に対象者、締め切り、承認の要否、申し込み先をまとめる、といった改善を検討できます。

大切なのは、質問した人が案内を読んでいないと決めつけず、案内の側にも改善できる点がないか考えることです。

相談には個人情報や慎重に扱う内容が含まれるため、入力できる情報と利用環境は先に確認します。また、件数の少ない相談でも重要なものはあります。AIの分類だけで、対応の優先順位を決めないようにします。

なぜ、人事の仕組みが手薄な会社に注目するのか

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ここまでの例には、共通点があります。

住所変更のルールはあるけれど、案内が見つからない。目標設定の制度はあるけれど、書き方が伝わっていない。新人を育てる人はいるけれど、誰が何を教えるか共有されていない。

つまり、制度や取り組みを、日々の仕事の中で使える状態にする部分が手薄になっているのです。

この点を考える参考になるのが、西村孝史氏の論文『人事部門にとって生成AIは敵か味方か』です。

研究では、2025年3月に人事・総務部門で働く人を対象とした2時点の調査を行い、最終的に186名の回答を分析しています。生成AIの活用度は、人事部門と現場との良好な関係に関連していました。また、人事施策が十分に整っていない場合に、生成AIが運用を補う可能性が示されています。

ただし、仕組みが手薄なほど効果が大きいという解釈に関わる結果は、統計的には10%水準の有意傾向にとどまります。導入すれば必ず改善する、会社の業績が上がる、と証明した研究ではありません。

この記事で紹介した具体例も、研究で個別に効果を検証した方法ではなく、研究を踏まえた実務上の提案です。

そこから考えられるのは、社内の仕組みが完璧に整うまで待つのではなく、今ある資料や担当者の知識を整理する作業から、活用を検討できるということです。

調査の概要や、仕組みが手薄な会社で生成AIがどのような役割を担い得るのかを詳しく知りたい方は、「生成AIを味方にする人事部門の取り組み」をご覧ください。

人事部門で生成AIを小さく導入する4ステップ

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使い方をイメージできても、実際に始めるとなると迷うかもしれません。ここでは、住所変更の案内を作る例で、導入の流れを見てみましょう。

ステップ1:繰り返し発生する業務を一つ選ぶ

最初は、住所変更について毎回同じ質問に答えている、といった範囲の狭い仕事を選びます。

人事への問い合わせをすべてAIで対応しようとすると、扱う情報も例外も増えます。まずは一つの手続きに絞ると、何を準備し、どこを確認すればよいかが明確になります。

あわせて、現在どのような質問が届き、回答や資料探しにどれくらい時間がかかっているかを記録しておきます。

ステップ2:使う資料と、確認する人を決める

住所変更の案内であれば、最新版の手続き資料や申請先の情報を用意します。

ここで、古い案内と新しい案内が混在していると、どちらを使うべきかAIも誤るおそれがあります。先に参照する資料を確定し、申請先や手順を確認する担当者を決めます。

下書きの作成だけなら、実在する従業員の氏名や住所を入力する必要はありません。目的に必要な情報だけで始められるか考えてみましょう。

ステップ3:少人数に使ってもらい、迷ったところを直す

作成した案内を、手続きに詳しくない社員に読んでもらいます。

申請先の説明があるのにリンクがない。人事システムと書かれていても、社内のどのサービスを指すのかわからない。こうした点は、作った側だけでは気づきにくいものです。

案内を読んで最初に何をすればよいかわかるか、確認してみましょう。実際に申請画面を開くところまで試してもらうと、迷う箇所を見つけやすくなります。

見つかった問題は、人が直接直したり、条件を補って生成AIに修正案を作らせたりします。

ステップ4:作る時間と、使う人の困りごとの両方を確認する

AIが数秒で案内を作っても、その修正に長い時間がかかるなら、作業全体では負担が減っていないかもしれません。

たとえば、仮に手作業で30分かかっていた資料作成が、AIでの下書き5分、確認と修正15分になったなら、合計は20分です。このように、確認まで含めて比べます。

さらに、案内を共有した後に申請先を尋ねる質問が減ったか、案内を読めば手続きを進められたかも確認します。

確認すること住所変更の案内で見るポイント
作業の負担下書き・確認・修正の合計時間は減ったか
内容の正確さ申請先や手順に誤りはなかったか
使いやすさ手続きに詳しくない人でも、次の行動がわかったか
問い合わせの変化同じ内容の質問や、説明のやり直しは減ったか

結果を見ながら、続けるか、案内を修正するか、別の業務に対象を変えるかを判断します。

生まれた時間を、現場との対話につなげる

住所変更の案内が見つかりやすくなれば、その場所を毎回説明する負担を減らせるかもしれません。新人の確認表があれば、どこまで教えたかを一から確認する手間を減らせる可能性があります。

その先で考えたいのが、生まれた時間の使い道です。

たとえば、新人と話したときに、電話の取り方はわかったものの、先輩が忙しそうで質問できずに困っていると打ち明けられるかもしれません。これは、手順書を増やすだけでは解決しにくい問題です。教育担当者と相談し、質問できる時間を設けるなど、人が関わる支援が必要になります。

生成AIの活用を始める際は、減らしたい作業と、増やしたい支援を一緒に考えてみましょう。

まずは、いつも同じ説明をしている仕事や、詳しい人が休むと止まる仕事を一つ選ぶ。そこで使う案内や確認表の下書きをAIで作り、人が確かめて現場に届ける。自社に合うかどうかを、小さく試すところから始められます。

研究の背景については、要約記事「生成AIを味方にする人事部門の取り組み」でも紹介しています。

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