生成AIを味方にする人事部門の取り組み

生成AIを味方にする人事部門の取り組み

生成AIは人事部門にとって敵か味方か 

生成AIの登場で、自分たちの仕事が奪われるのではないかと身構える人事担当者も少なくないはずです。東洋大学の西村孝史先生は、論文「人事部門にとって生成AIは敵か味方か」で、実際に人事部門でどれだけ生成AIが使われ、どんな影響を及ぼしているのかを、調査データから明らかにしました。 

調査の概要

現企業に3年以上勤務し、人事・総務部門で働く25〜59歳の会社員186名を対象に、2025年3月にインターネット調査を実施しました。回答者の多くは勤続18.8年、従業員1,000人以上の製造業に勤めています。分析では、生成AIの活用度、複数の人事施策を組み合わせて運用する仕組み(高業績ワークシステム)の充実度、人事部門と現場との関係性を取り上げ、統計的手法で検証しています。  

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何がわかったかー今のところは味方

分析の結果、生成AIは今のところ人事部門にとって味方だといえます。ただし、全面的に仕事を奪う敵でもなければ、なんでも解決してくれる万能な味方でもないようです。

現場との関係性向上に効果的
生成AIの活用度が高い企業ほど、人事部門と現場との関係性が良好になることがわかりました。定型業務の負担が軽くなった分、人事担当者が現場に時間を割けるようになるためと考えられます 。

人事の仕組みが手薄な企業に特に効果的
さまざまな人事の仕組みがまだ十分に整っていない企業ほど、生成AI活用による関係性改善の効果が大きいという結果が出ました。逆に、もともと仕組みが充実している企業では、その効果は限定的でした。生成AIは人事の仕組みそのものを置き換えるのではなく、既存の仕組みをうまく回すための補完役として機能している様子がうかがえます。 

とはいえ、活用はまだ限定的で、脅威にも感じていない
生成AIの活用度を尋ねた30項目は、いずれも5点満点中3点を超えず、最もスコアが高い「人事評価の実施」でも2.23点でした。また「自分の担当業務が5年以内に生成AIに置き換わるか」には「全くない」が41.4%を占め、人事部門は生成AIを味方としつつも、全面的な代替は想定していないようです。 

生成AIを味方につける人事部門の取り組み

属人的な課題はチャンス
この研究が示す最大の示唆は、生成AIの効果は、制度が整っていない組織ほど大きいという点です。人事評価や配置等の重要な業務が、属人的で言語化されていないといった状態に心当たりがあるならば、それは弱みであると同時に、最も伸びしろがある状態とも言えます。一方、なぜそういった状態になっているかを鑑みれば、運用が長いことベテラン頼みになっていたり、データ化されていない定性的な情報を加味しているという実情もあるでしょう。

どうやってベテランに変革を迫るのか
論文中では、流布されている人事の3Kとして、「経験・勘・コツ」が挙げられていました。人事領域においてデータ化と分析が進んできたこの10年ほどの間、旧来的な人事の象徴とされてきた言葉でもあります。生成AIの導入を進めるということは、こうした言葉の陰で、旧来活躍していたベテランに仕事の仕方を変えるよう迫る必要があるという現実的な課題を意味します。

一方、生成AIが敵にならない理由として、定型業務の負担を減らすことで人事担当者がより現場との対話や戦略的な役割に時間を割けるようになることも指摘がありました。つまり生成AIは、ベテランの仕事を奪うのではなく、「経験・勘・コツ」に頼っていた部分を後方支援し、対人的な仕事に集中させてくれる存在だということです。 さらに、論文では、人事部門自身が生成AIの活用にまだ慎重・消極的な実態も明らかになっています。 これらのことを人事部門内で共有し、生成AIを何にどう使うかイメージを固め、スモールスタートを切ることが、生成AIを敵にせず、頼れる味方として定着させる近道といえるでしょう。

(合同会社YUGAKUDO 田口光)

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