なぜ自分の名前と似たブランドに惹かれるのか?
私たちは、自分の名前に含まれる文字に無意識のうちに好意を抱く傾向があります。この現象は「ネームレター効果」と呼ばれ、名前に含まれる文字と一致するブランドに好感を持ちやすくなることが、欧米の研究で報告されてきました。
上智大学の外川拓先生のチームでは、論文「顧客の名字がブランド選択に及ぼす影響 ― 視覚情報としての文字に注目して ― 」で、この効果が日本語の「漢字」にも当てはまるのか、特に名字と一致するブランド名が購買に影響を与えるのかを実データで検証しました。
具体的には、北海道の生協で、胃腸薬「太田胃散」の購買履歴データを分析し、「太田」という名字の顧客がこの商品を他の名字の顧客よりも高い確率で購入していることを確認しました。興味深いのは、「大田」や「多田」といった読みが同じでも漢字が異なる名字ではこの効果が見られなかった点です。つまり、音の一致(読み)だけでなく、視覚的な一致(漢字)も重要であることが示唆されました。
日本語特有の心理を突く。ターゲットの名字を活かした商品開発のヒント
実務への活用ポイントは以下の通りです。
- ブランド名に「人名」を使う効果的戦略
ターゲット顧客層に多い名字をブランド名に用いることで、無意識の親近感を引き出し、購入確率を高める可能性があります。 - パーソナライズ販促の新たな切り口
顧客の名字と一致するブランド名の商品を対象に、DMやクーポンを送付すれば、通常よりも高いレスポンスが期待できます。 - 名入れ・カスタマイズ商品との相性
自分の名前が入った商品は「自分ごと化」されやすく、購入意欲が高まりやすい傾向にあります。名入れ商品やギフト需要においても有効な手法と言えるでしょう。
この研究は、文字の「読み」だけでなく「見た目」も重視される日本語特有の特徴を踏まえた、ユニークかつ実用的なマーケティング示唆を提供しています。商品開発や販促企画に取り入れることで、より深い消費者心理へのアプローチが可能になるでしょう。
記事原案 新谷志津乃
