ビジネスに効く、社会人大学院生の論文術⑥この論文が好き 背中を押す!自信をつける!コミュニティとマネジメント

ビジネスに効く、社会人大学院生の論文術⑥この論文が好き 背中を押す!自信をつける!コミュニティとマネジメント

ぜひ読んで!
IT業界の方や、社内外でコミュニティ運営をしている方、マネージャー陣
どんな論文?
・コミュニティ停滞を打破する具体的なヒントが詰まった、現場で「使える」研究
・208名の定量調査で全体像を証明、5名の深いインタビューで「なぜ社員の声かけが響くのか」という細部を補強、具体例を提示

やさしいビジネススクールの山下です。
やさしいビジネススクールで新規事業開発をはじめ、さまざまな職務に携わりながら、夕方からは社会人大学院生として、授業に行き、研究に取り組む生活をしています。

私の好きな論文を3回に渡ってご紹介しています。

第1回目 ビジネスに効く、社会人大学院生の論文術④この論文が好き マーケティングに「未来」という切り口をhttps://ronbun.news/sp-original/20260620_column_yamashita

第2回目 ビジネスに効く、社会人大学院生の論文術⑤この論文が好き あなたはどのタイプ?アントレプレナーの4類型
https://ronbun.news/sp-original/20260627_column_yamashita

今回ご紹介する論文はこちらです。
B2B ブランド・コミュニティ活性化のメカニズム ― 自己効力感の形成プロセスと能動的参加行動 ―
(マーケティングジャーナル  2025 年45巻3号)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/marketing/45/3/45_2025.031/_pdf/-char/ja

こちらの論文は、IT業界の方や、社内外でコミュニティ運営をしている方、マネージャー陣に特におすすめします。

ROM専を動かすコミュ活の極意

B2B企業において、ユーザーコミュニティの活性化、特に「ただ見ているだけ(ROM専)」ではない能動的な発信をどう引き出すかは、共通の課題でした。
ここでのユーザーコミュニティとは、IT分野でのコミュニティのことを指しています。たとえばAmazon Web Services (AWS)、サイボウズ、freeeなどを意味し、まさにユーザー同士が当該プロダクトについて情報交換をする場のことをいいます。プロバイダーにとっては、顧客の声を直接吸い上げたり、新機能の壁打ちをしたり、あるいはアンケートを取ったりなど、様々な活用方法が考えられ、大変貴重な場となっています。

つまり、コミュニティの価値は活動量といっても過言ではないため、冒頭述べたようなROM専ユーザーのみで静まり返えるいる場においては、その価値は低減してしまいます。
これが、コミュニティ運営者ならば誰もが一度は悩むところでしょう。

今回ご紹介する論文は、その停滞を打破する具体的なヒントが詰まった、まさに現場で「使える」研究です。
この論文を推す理由は、統計的な裏付けと、現場の納得感がある定性的な分析の両側面から、今すぐ取り入れられるアクションを提示している点にあります。

「自分にもできる」という自己効力感が、継続参加の鍵

この論文の最も優れた点の一つは、コミュニティでの発信や登壇といった能動的参加行動の鍵が「自己効力感(自分にはその行動ができるという自信)」にあることを、統計的に証明した点です。

定量調査の結果、以下のプロセスが明らかになりました。
他者の発信を見る(代理体験)ことや、周囲からの勧め(言語的説得)が、まず行動(制御体験)につながります。その行動から、「自己効力感」を非常に強く高め、それが実際の能動的参加行動そして継続へとつながることが示されたのです。

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B2Bだからこそ効く、社員による「言語的説得」の威力

さらに興味深いのは、インタビューから得られた知見です。コミュニティでリーダーとして活躍する5名全員(※プロダクトのユーザーの中でのリーダー各メンバ―)が、企業側の社員からの「言語的説得」によって「背中を押された」経験を持っていました。先行研究においても、B2Bの文脈で、担当者間の関係性が取引や信頼に大きく影響することがわかっています。

この論文では、さらに以下の点が示唆されています。

社員(※コミュニティマネージャー等)からの「あの話、すごくよかったので、他のメンバーにもぜひ共有してください」という具体的な声かけが、メンバーが一歩踏み出すための決定的な要因となります。これは、単なる「勧誘」ではなく、メンバーのスキルや経験を肯定し、コミュニティへの貢献を促す重要なコミュニケーションです。

つまり、「何か情報発信してください」とただ促すのではなく、メンバーが「これなら自分にもできそうだ」と思えるステップをどう設計すべきなのか、理論的な指針を与えてくれます。

コミュニティこそマネジメントだ!

この論文が素晴らしいのは、208名の定量調査で全体像を証明しつつ、5名の深いインタビューで「なぜ社員の声かけが響くのか」という細部を補強している点です。

「コミュニティの活性化は、メンバーの自発性に任せるしかない」と諦めていませんか?
やや強い言葉になりますが、それは信任ではなく、放置かもしれません。

この研究は「代理体験の場(他者の事例紹介など)を作り、社員が適切に声をかけ、小さな成功体験を積んでもらう……」という、企業側がコントロール可能なアクションによって活性化が可能であることを示しています。
まさに、マネジメントの一つの姿とも言えるでしょう。
B2Bコミュニティを「なんとなく」運営しているすべての担当者に、理論と実践の架け橋としてこの論文を強くおすすめします。

(やさしいビジネススクール 山下浩輝)

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