社内有志の自主活動を、会社の力に変えるには?

社内有志の自主活動を、会社の力に変えるには?

自律か管理かー葛藤をどのように乗り越えるか

社内で始まった有志の勉強会や交流会が、いつの間にか経営層も注目する取り組みに育っていく。あるいは、取り組みに成果がでて着目され、公式組織の支援や管理を受け始めたら消滅してしまった。そんな場面に心当たりはないでしょうか。

グロービス経営大学院の今井悠資先生の論文「実践共同体の二重編み化プロセス:公式組織との境界における共創的学習サイクル」では、こうした社内コミュニティ(実践共同体)が公式組織との間でどのような葛藤を抱え、どう乗り越えて「会社にとって欠かせない存在」へと育っていくのかを、実地調査を通じて明らかにしました。

調査の概要

東証プライム上場企業またはそれと同等規模の組織にある15社18のコミュニティ、合計22名のリーダーを対象にインタビュー調査を実施し、その語りをM-GTAという手法で分析しています。この手法は、人間同士の相互作用や物事が変化していくプロセス(メカニズム)を解明するのに優れているのが特徴です。論文内の4つの時期(活動開始期・意味交渉期・領域自覚期・一次的変容期)のプロセスをもとに、実務上の流れを理解しやすいよう、大きく3つの段階(ステップ)に整理して解説します。 

第一段階 活動開始期-公式な後ろ盾なしの手探り
公式な承認も予算もないまま、リーダー個人の人脈や交渉力を頼りに活動を始める時期です。成果が注目を集める一方で、「勝手にやっている」という批判も同時に巻き起こります。

第二段階 意味交渉期と領域自覚期の往還-「一時的制度化」がカギに
公式組織からの反応(賛同や批判)を受けて、コミュニティは自分たちの立ち位置を何度も見直していきます。ここで転機になるのが、予算の一部や業務の一部を任される「一時的制度化」です。これを経験したコミュニティは、公式組織の文脈を自分たちの活動に取り込み、「会社のためになっている」という実感を深めていきます。

第三段階 一次的変容期-3つの分かれ道
十分な意味交渉を重ねたコミュニティは、公式組織と補い合う「二重編み化」という状態に至ります。一方、機会に恵まれず意欲が下がり続けたコミュニティは、活動を終えたり、リーダーが離職したりしました。また、一時的制度化を経ずに一気に正式な部署へ格上げされたケースでは、かえって活動が形だけのものになり、関係者の離職を招く傾向も見られました。

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有志活動を組織の力に変える「スモールステップの公式化」の極意

論文の事例はコミュニティのリーダー視点でしたが、メンバーの有志活動を預かる管理職にとって極めて重要な示唆を与えます。 メンバーが持ち寄った勉強会や提案を、すぐに成果や評価で縛ってしまうと、彼らは萎縮して守りに入ってしまいます。一方で、放任しすぎれば会社の目指す方向とすれ違い、熱意が冷めてしまうリスクもあります。この『管理すべきか、自由にさせるべきか』という揺れ動く悩みこそ、有志の活動が直面する本質的なパラドックス(矛盾)なのです。

解決のヒントは、論文の鍵となる概念「一時的制度化」にあります。本来の定義は、「公式な予算の獲得(予算化)」や「正規の業務の一部を公式に担当すること(業務の一部を請け負う)」を指します。これを通じて、メンバーは自らの活動が会社に貢献している手応えを得て、組織人としてのアイデンティティを再構築していくのです。

この論文の知見を実務に応用するアプローチとして、いきなり重い責任を割り振るのではなく、段階的に公式な接点を持たせていく「スモールステップの公式化」が有効です。例えば、チームミーティングでの紹介や社内広報への応募など、非公式な活動に、公的なスポットライトを当てる機会を少しずつ作ります。こうした身近な機会を重ねることで、メンバーは活動が組織にとって意味を持つことを実感できるようになります。

注意する点として、賞賛のあまり焦って、正式な部署へ格上げ(完全な制度化)をしてしまうことです。論文では、一時的制度化を十分に経ない急激な公式化は、活動の形骸化や中心人物の離職を招くリスクがあると指摘されています。管理職は賞賛したい気持ちを抑え、焦らずに、コミュニティ自身が組織との「ちょうどいい距離感」を見つけられるよう支援すべきです。

本研究は、30万字を超えるインタビューから生の声を拾い、分析しています。現場で最適な距離感を探るには、論文に引用された臨場感ある声を参考にしつつ、メンバーと対話を重ねて目指す方向性を丁寧にすり合わせていくことが、有志の活動を組織の力に変える近道となります

(合同会社YUGAKUDO 田口光)

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