高度外国人採用、人事部が直面する「綱引き」の正体
「今年は外国人採用を検討した方がいいのだろうか?」
人事担当者がふと漏らすこの言葉は、実は企業の内側にある“揺れ”を映し出しているのかもしれません。
慶應義塾大学の園田 薫先生の論文「高度外国人材の雇用における日本企業の意味づけと実践の差異:外的整合性と内的整合性をめぐる本社人事部の綱引きゲームに着目して」では、日本企業が直面する外国人採用の現状について、企業ごとにまったく異なる意味づけと実践が存在することを明らかにしています。
高度外国人材とは?
この研究での高度外国人材とは、単に外国籍の社員という意味ではありません 。ノベーションを生み出す専門性を持ち、企業の競争力を高める存在として期待される人材のことを指します。しかし現実には、多くの企業が選んでいるのは日本にいる留学生です。なぜ、理想の高度人材ではなく、留学生採用に集中するのでしょうか。
日本企業を揺らす二つの力
本論文では、日本企業が「 二つの力の綱引き」の中にいると指摘します。
一つは、政府方針や会社のルールによって「外国人を採用しなければいけない」という圧力です。
もう一つは、長年続いてきた日本企業の伝統的な雇用のスタイルや社会の風土を維持したいという内情です。
企業はこの外圧と内圧の狭間で激しく揺れ動き、結果として、既存の制度に最も適応しやすい外国人である留学生という低リスクの選択肢に落ち着いているのです。
企業姿勢によって留学生採用の意味は違う
興味深いのは、どの企業も留学生を採用しているように見えて、 その背景にある意味づけはまったく異なるという点です。
本論文では、企業の姿勢は大きく3つに分かれると示されています。
● 変革を志向する企業
「このままでは競争力が落ちるから、外国人材を活かして組織を変えたい」と思い、外圧をチャンスと捉えるタイプ
● 日本型に固執する企業
「以前、高度人材を採って失敗したから、日本に馴染む留学生だけでいい」と思い、 内部の安定を優先するタイプ
● 象徴的な対応をとる企業
「社会的な要請や外圧は感じるが、自社の事業で外国人を活用する具体的な意義が正直見いだせない」と考え、現状の制度を変えず形式的な対応に留めるタイプ
同じ留学生採用でも、企業の未来は大きく分かれます。
今すぐ実践!外国人材採用を考えるヒント
今回の研究が明らかにしたのは、外国人材の採用が単なる人手不足対策ではなく、企業の価値観や未来への姿勢を映し出す鏡だということです。
では、この知見をビジネスの現場でどう活かせばよいのでしょうか。
自社の採用の意味を可視化しよう
まずは、外国人材を採用する理由を書き出してみましょう。
外圧に応えるため?
制度を変えたくないから留学生?
本気で企業変革をしたいから?
理由を言語化するだけで、会社の“隠れた価値観”が浮かび上がります。
チームで対話してみよう
次に、部署内で「外国人材が活躍できる環境とは?」をテーマに話してみましょう。 食卓の会話が人間関係を深めるように、採用の価値観を共有することで、 組織の方向性が驚くほどクリアになります。
顧客理解にも応用できる
企業が外国人材をどう意味づけるかは、実はマーケティングにも応用できます。 顧客が“どんな価値観で商品を選んでいるか”を読み解く視点が磨かれるからです。 採用の意味づけを分析することは、顧客の心を読む力にもつながります。
この研究は、外国人材の採用が単なる制度の問題ではなく、企業の価値観・未来志向・組織文化を映し出す行動であることを教えてくれています。
あなたの会社の“本当の姿”を見つけるきっかけになるかもしれません。
(なつこ)
