メタバースでのブランド作りはリアルと決定的に異なる 「あつ森」で検証

メタバースでのブランド作りはリアルと決定的に異なる 「あつ森」で検証

メタバース空間でブランド価値はどう変化するか

現実世界で人気の高級ブランド製品は、インターネット上に構築された3次元の仮想空間、つまりメタバースでも同じように高く売れるでしょうか?

実際のところ、メタバースでは現実の価値基準がそのままでは通用しないのです。亜細亜大学の福田怜生先生と明治学院大学の赤松直樹先生の「メタバースにおける現実世界のステータスシンボルの影響― 二つの世界を繋ぐフィジタルフレンドの役割―」という論文は、現実と仮想の両方でつながる友達がいることが、この課題の解決の鍵となることを明らかにしました。

仮想空間で薄れるステータスブランドの価値

現実世界において、高級ファッションや自動車などのブランドは、所有者の地位や威信を示す役割を果たします。しかし、メタバースの仮想製品においては、素材の良さや触覚などの物理的な品質を伝えることは困難です。

メタバースには現実世界で重視される金銭、学歴、職業などの社会的属性に縛られない、デジタル空間独自の評価基準があります。メタバースの世界では、レアアイテムの所有、ゲームでの実績、イベントへの貢献度などが、強いステータス指標として尊重されるという、新しい文化や価値観が形成されているのです。

本研究では、このメタバース特有の現象を検証するため、オンラインゲーム「あつまれどうぶつの森」の利用者104名を対象に、架空のブランドを用いたアンケート実験を実施しました。あつまれどうぶつの森は、無人島に移住し、個性的な動物の住人たちと交流しながら、釣・虫採り・DIYで自分だけの島を作り上げるスローライフゲームです。

その結果、仮想製品の場合、現実製品と比べて、ステータスブランドを身につけることで理想の自分に近づけるという感覚が弱まり、製品に対する好意的な態度も低下することが確認されました。

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救世主となるフィジタルフレンドの存在

では、メタバースでステータスブランドの価値を高めることはできないのでしょうか。
そこで着目したのが、現実でも面識があり、かつメタバース上でも交流する友人、すなわち「フィジタルフレンド」の存在です。

同ゲームの利用者181名を対象とした追加実験で、フィジタルフレンドがいるグループといないグループを比較調査した結果、フィジタルフレンドがいる場合には、ステータスブランドによる理想の自分への接近と仮想製品へのポジティブな態度が見られました。つまり、デジタル空間に現実に基盤を持つ人間関係が持ち込まれることで、ブランドの持つ本来の価値が機能したのです。

現実空間の価値が機能する心理メカニズム

さらに215名の利用者を対象にした第3の実験で、その背後にある心理メカニズムを解明しました。データ分析の結果、フィジタルフレンドがいる環境では、ステータスブランドを所有することでコミュニティの他者から尊敬される、認められることを期待する心理が高まりました。つまり、フィジタルフレンドがいる場合、ステータスブランドを所有することで理想の自分に近づけたと感じ、最終的に仮想製品への評価が向上するということです。

仮想と現実をつなぐブランド戦略

メタバースでのブランド戦略は、単に現実世界で成功しているブランドアイテムを3Dデータ化してメタバース市場に投入するだけでは不十分です。エビデンスに基づかない施策は、投資対効果を大きく損なう可能性があるからです。

物理的な品質や触感で差別化できない仮想空間では、現実のブランド力に依存するのではなく、メタバース特有のステータス指標に合わせた製品設計が必要です。

また、メタバース内でのブランド価値を維持・向上させるには、単に見知らぬアバター同士を交流させるだけでなく、現実と仮想を行き来する友人関係を意図的に形成・活性化させる仕掛けが重要となります。

たとえば、現実の店舗でのイベント参加者にメタバース内の限定アイテムを付与したり、現実の友人同士がメタバース上のイベントに一緒に参加できる企画を実施するなど、リアルとバーチャルを橋渡しする施策が有効となるでしょう。

メタバース空間は単なる新しい販売チャネルではなく、現実の人間関係を持ち込むことで真の価値を生み出します。自社の事業開発やブランド戦略に「フィジタル」の視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。

記事原案 M.Sumida

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