協力関係でもあり競合サイトでもある「Yahoo! ニュースとニュースメディア」は、どう関係を調整してきたか

協力関係でもあり競合サイトでもある「Yahoo! ニュースとニュースメディア」は、どう関係を調整してきたか

プラットフォームビジネスにおける「協力と競争」とは何か?

ネットビジネスでは、企業同士が協力しながら同時に競い合う関係が生まれることがあります。たとえば新聞社や出版社は、自社のウェブサイトで記事を配信しながら、同時に Yahoo! ニュースにも記事を提供しています。読者や広告費をめぐって競いながら、一方でお互いのビジネスを成り立たせているのです。
大阪大学の富樫佳織先生は、論文「プラットフォームビジネスにおけるコーペティションの緊張マネジメント―Yahoo! ニュースの事例研究―」で、こうした関係においてどのようなジレンマが生まれ、それをどう乗り越えてきたのかを、Yahoo! ニュースの26年間の調査・分析を通じて明らかにしました。 

調査の概要

Yahoo! ニュースの創業(1996年)から2022年までを対象に、LINEヤフーの上級役員や新聞社・出版社の関係者へのインタビューに加え、有価証券報告書や広告費データなどさまざまな資料を組み合わせて分析しています。

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何がわかったか

Yahoo! ニュースとニュースメディア事業者との関係は、3段階で変化してきました。

第1段階(1996〜2006年) 重要パートナーと競争関係になる危機
記事配信料を支払って記事を集め、広告収入を得るシンプルなビジネスからスタートしました。しかし重要なパートナーであった大手通信社が契約を停止し、自ら配信サービスを構築するという出来事が起きます。これが最初のジレンマでした。Yahoo! ニュースはこれを受け、パートナーの利益にもつながる報酬の仕組みを模索し始めます。

第2段階(2007〜2014年) パートナーとの協力関係の模索‐報酬の工夫
パートナーのサイトに読者を送り込んだり広告収入を分け合う仕組みを導入しました。しかしパートナー側が読まれやすい記事ばかりを提供するようになり、ニュースの多様性や公共性が損なわれかねない状況が生まれました。Yahoo! ニュースはこれに対し、閲覧数だけでなく記事の「質」も評価する報酬の仕組みを設けることで対応しました。

第3段階(2015年〜) 協働作業を通した協力と未だ解決しない問題のジレンマ

両者が共同で記事を制作する取り組みも始まりました。一方で、記事が Yahoo! ニュース上だけで読み終わられパートナー自身のサイトへ読者が来なくなる問題や、報酬の算定基準への不満という新たなジレンマが浮上しており、解決策はいまも模索中です。

実務への応用

論文の事例はYahoo! ニュースというプラットフォーマーの視点からでしたが、パートナーサイトに視点を移すと、身近な事例に置き換えることができます。

例えば、Amazonや楽天といったプラットフォームと、自社の販売サイトを併用している企業は同じ構図となります。プラットフォームを通じて売上を伸ばせる一方で、顧客が自社サイトに直接来なくなるリスクも抱えているからです。
巨大なプラットフォームでは、販売量の増加も期待できる一方、プラットフォームへの依存が高くなってしまいます。そうすると、支払う手数料も増加しますから、利益率は低下し、さらにプラットフォームによっては顧客情報やそのニーズ動向といった、通常は自社でキープするコア情報も得ることができなくなります。
かといって、自社の知名度がない状態からスタートする場合、こうしたプラットフォームは、売上を増加させることと同時に、商品や自社の知名度をあげることができるため、大変魅力的に映ります。

こうした企業がまず意識すべきは「プラットフォームとのジレンマはいつか必ず生じる」という前提を持つことです。Yahoo! ニュースの事例では、ジレンマは一度ではなく、ビジネスの成長段階ごとに形を変えて繰り返し現れました。問題が起きてから慌てるのではなく、「次はどんなジレンマが来るか」をあらかじめ考えておくことが重要です。 
知名度がない状態では、巨大なプラットフォームを利用しつつも、依存度が高まるリスクを理解しておけば、同時に自社直販ルートの充実や、リアル店舗・販売代理店等利用といった準備をしておくことができます。
パートナーの視点で活用できることを記載しましたが、プラットフォーマーの視点としても同様のことが言えます。パートナーは、プラットフォーマーへの依存をリスクと捉え、離脱する可能性があるということです。

Yahoo! ニュースの事例では、報酬の見直しなどが行われていました。それと同様に、パートナーの行動が、プラットフォーマーから見て好ましくない方向に向かい始める前に、異なるインセンティブを提示する必要があるでしょう。ジレンマはビジネスの成長段階ごとに形を変えながら繰り返し現れます。それを「例外的なトラブル」ではなく「ビジネスの構造から必然的に生じるもの」として前もって想定しておくことが、プラットフォームビジネスを長く続けていくうえで最も重要な心構えといえるでしょう。 

(合同会社YUGAKUDO 田口光)

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