「先人の踏襲」が不正を生む?三菱自動車の事例
近年、日本では大手企業が長年にわたって不正行為を継続していた……という事態がたびたび発覚しています。
なぜ、そのようなことが起こってしまうのか。明治大学の會澤綾子先生は、論文「技術的問題における慣習的な不正行為の継承と規範化」で、三菱自動車を事例に、不正行為の継続の背景に何があるのかを分析しました。
経営学では、不正行為が行われる理由として3種類の論理が提唱されています。
(1)倫理性の問題 不正が行われたのは組織・個人の倫理性が欠如していたのだとする見方
(2)合理性追求の問題 経済合理的な理由から不正がみとめられてしまうとする見方
(3)社会的行為となってしまっているという問題 その組織・個人を取り巻く状況がその不正を行うことを是としてしまうという見方
本論文ではこの3つの観点から、2016年に発覚した三菱自動車の燃費数値の不正問題について、調査委員会、アニュアルレポート、記者会見等から同社に何が起こっていたのかを分析しました。
事例研究の結果は以下のとおりです。
・三菱自動車の内部では、担当者自身が不正を認識し、「おかしいのではないか」と声を上げていたことが分かりました。少なくとも担当者レベルで、倫理観の欠如から不正を行ったとは言い難い状況だったことが明らかになりました。
・他社との競争に遅れまいとする意識から、不正が継続されるという形で、一定の合理性追求の動機も確認されました。
・しかし最大の要因は、燃費検証がクローズドな環境で行われ、過去の担当者が作り上げた手法を踏襲することが当然視されていた点にありました。担当者はそのやり方に疑問を抱く余地がほとんどないまま業務に従事し、その状態が何十年も続いていたことが、不正を「社会的行為」として定着させてしまったと突き止められました。
・さらに、その燃費測定法は「他国では認められている方法である」という理由から、このやり方でも問題ないと正当化されてしまっていました(これも社会的行為化の一例)。
こうして、不正は会社の構造の中で社会的行為として常態化していったのです。
ここから、私たちが学ぶべきこと
経営学の世界では、組織不正は「悪い人がやるのではない」ということは、実は以前から明確になっています。「これくらいならいいだろう」という、私たちが日常でも感じるちょっとしたズルの感覚が原点で、それが「仕方のない事情」「それでも良いだろうと言える言い訳」「長年の習慣化」のなかで、大きな問題となってしまう。この論文で指摘されているのも、平たく言えばそういうことなのです。
だからこそ、私たちはそうした組織内での「ちょっとくらいいいだろう」「仕方のない事情がある」「他国ではこれでやっているし」「昔からそうだし」を疑う必要があるのです。現代ではこうした不正は一度で会社を傾かせかねない時代です。自分は大丈夫だ、と思っている人にこそ、改めて気をつけてもらいたい、ということが組織不正研究の大切な知見なのです。
