安全は効率化の「手段」?技術革新の盲点
現代社会は数多の技術によって支えられています。この技術が人間の心身にとって安全であることは、技術を基盤とした社会の健全性にとって、大変重要な意味を持ちます。
関西大学の原拓志先生の論文「社会的課題とイノベーション ― 技術システムの安全を例として ―」では、現代社会を支えている技術をめぐって、イノベーションと安全との関係について、見直すべきときが来ていると論じます。
安全性は、常に事業効率改善のための手段となってきた
原先生は、新幹線、航空管制、そして現在進行中の自動運転技術の進歩をそれぞれ俯瞰するなかで、以下の点を見出しています。
●いずれの分野でも、安全性を高めるような技術改良は積み上げられている。事実として、甚大な事故は起こさずにこれまでやれている。
●しかし、安全性を高める技術改良は、基本的に事業効率の改善という最終目的のうえに使われている。新幹線は、安全性を高めるとともに運行密度を高める方向へと事業が展開された。航空管制も同様であるし、自動運転もまた同じ方向に進められている。安全性は、事業効率改善のための手段となっている。
これらの分野の技術進歩の歴史を紐解けば、安全性を高めた結果はすべて効率性に還元され、その結果として重大な事故のリスクそのものは依然として残り続けるかたちでシステムが発展してきていると原先生は論じるのです。
安全のための安全に、立ち返るべし
原先生はここで、事業効率という目的のための安全と、安全のための安全が違うことを認識し、今後さらに進んでいく技術進歩の中では、安全のための安全に立ち返る必要があると論じます。それは決して大転換というわけではなく、「妥協点を変える」というやわらかい方法により、現代の進歩と調和的に、しかしはっきりと究極的に効率性を志向することからは方向性を変えて、進められるべきだというのです。さもなくば、AIやロボットが人の力をはるかに超えて進歩していくなかで、私たちの社会は技術の破綻によって壊滅的なダメージを被るリスクを、現代社会が常にはらんでしまうことになるからです。
企業経営からすれば、安全を高めながら、事業効率を改善することは、果たすべき社会的責任を果たしながらの事業経営の成長を期する姿勢でしょう。それが批判されることは受け入れがたいことかもしれません。しかし、安全が本来の目的ではないかたちで事業の中で使われている現状を振り返ることは、たしかに重要なことでしょう。皆さんの会社の「安全」が、結局は収益性の観点に還元されていないか。ぜひ、振り返ってみてください。
