ガバナンスで不祥事は減らせる 国内企業で実証

ガバナンスで不祥事は減らせる 国内企業で実証

物言う社外取締役が鍵。不正を防ぐ「人の質」

企業の不祥事が後を絶たない中、「ガバナンスを強化すれば不祥事は防げるのか?」という問いは、多くのビジネスパーソンにとって共通の関心事です。

中央大学の青木英孝先生は、論文「コーポレート・ガバナンスが企業不祥事に与える影響」において、2015年から2020年までの東証上場企業約9,000件のデータをもとに、ガバナンス要因が企業不祥事の発生にどのような影響を与えるかを定量的に分析し、その実効性と限界を明らかにしました。

不祥事の種類で異なるガバナンスの効果

この研究では、プロビット・モデルという統計の手法が使われています。これは、ある出来事が「起きた」か「起きなかった」かという、2つに1つの結果を予測・分析する方法です。

しかし、不正が起きたかどうかにも種類があります。この研究では不祥事の発生を2つの大きなグループに分けています。なぜなら、不祥事の種類によって防ぎ方(ガバナンス)が異なる可能性があるからです。

  • 意図的に行った不祥事:会計不正や偽装、改ざん、法令違反など
  • 事故的に起きた不祥事:製品やオペレーションの不具合やモラルハザードなど

そして、不祥事に影響を与える原因として、社外取締役の数や質や株主のタイプなど、不正の起きやすさが上がる可能性に影響しそうな条件を説明変数としています。

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不正に効くガバナンスの条件とは?

この分析から、以下のような不正抑制につながる条件が明らかになりました。

1.遠慮せず発言できる社外取締役
会社内部の事情に精通し、立場が強く遠慮せず発言できる人物が社外取締役にいる場合、不正行為は起こりにくくなります。特に親会社出身者や他社の社長クラスを兼任する社外取締役が多い企業では、不祥事発生率が低下する傾向があります。

2. 専門家が不正抑止効果を発揮する
警察官が街頭に立つだけで犯罪抑止力が高まるように、会計などの専門知識を持つ社外取締役がいることで、会計不正の抑制にも効果が認められます。

3. 事故的な不祥事には取締役会改革の影響は限定的
リコールや情報漏洩、食中毒など現場レベルの事故的な不祥事は、現場の仕組みや運用面の原因があるため、取締役会やトップ・マネジメントによる改革だけでは防ぎきれないことがわかりました。

4. 株主構成が事故型不祥事抑制に影響
機関投資家や安定株主の比率が高いほど、意図的不祥事や事故型不祥事の発生頻度が低くなります。安定株主は経営に直接圧力をかける存在ではありませんが、経営者が長期的な視点で組織を健全に運営する環境づくりに寄与し、結果として不祥事を抑える役割を果たしています。

5. 業績と不祥事発生の関係
意図的な不祥事は業績不振時に起きやすく、逆に事故型不祥事は業績が良い時期に増加する傾向があります。これは業績悪化で無理をして不正が起きやすい一方、好調時には気の緩みや業務量増加による事故発生リスクが高まるためです。

不祥事の種類に応じた適切な処方箋を

企業の不祥事を防ぐには、形だけのガバナンス改革ではなく、問題のタイプに応じた具体的な対応が求められます。

社外取締役の増員だけでなく、どのリスクに備えるかを見極めて、必要な専門性を持つ人材を選ぶことも大切です。たとえば会計不正に対しては会計や法務のスペシャリストを、談合など違法行為には親会社出身者や他社経営者を登用する効果が示されています。これらの知識や経験は、不正抑止力として機能します。

予期せぬ副作用も念頭に置きましょう。経営陣が自社株を保有するといったインセンティブは、場合によっては株価操作などの不正を誘発する可能性があります。また、監督と実行を分離した執行役員制は、現場の問題を見逃しやすくなるため、現場から経営層へ適切に情報を伝達する仕組みが不可欠です。

さらに、すべての不祥事がガバナンス改革だけで防げるわけではありません。製品事故のような「事故的不祥事」では取締役会改革の効果は限定的であり、日々の業務プロセスや企業倫理の浸透が重要となります。悪質な隠蔽体質への対策としては、内部通報制度を実効性あるものに整え、「隠し事を許さない」文化を育むことが決め手になります。

記事原案 M.Sumida

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