人のための行動、自発性は「共有」を、義務感は「隠蔽」を招く 日本での調査結果

人のための行動、自発性は「共有」を、義務感は「隠蔽」を招く 日本での調査結果

自発的か義務感か 2つの動機づけ


職場で、誰かの役に立ちたいという動機を持つ従業員は、周囲にとって非常にありがたい存在です。しかし、この動機が「そうしなければならない」というプレッシャーから生じている場合、かえって重要な情報やノウハウを同僚に隠してしまう可能性があります。

京都産業大学のシン ハヨン先生と一橋大学の島貫 智行先生は、論文「従業員の向社会的モチベーションが知識共有および知識隠蔽に与える影響 ― 動機の自律的・統制的側面の観点から 」で、自ら進んで行いたいという動機と、義務感やプレッシャーによる動機の2つのタイプが仕事上の行動にどのような影響を与えるかを調査しました。

その結果、自ら進んで他者に貢献したいという自律的な動機を持つ人は、大切な情報を積極的に共有する傾向が見られました。一方で、義務感に駆られて動機づけられている人は、情報を隠したり、知らないふりをしたりする傾向があることが明らかになりました。

761名の会社員を対象とした追跡調査

この研究では、従業員300人以上の企業に勤務する、20〜60歳の大卒以上のフルタイム正社員(係長以下)を対象にしたインターネット調査を行いました。回答者の負担を減らすことと、データの偏りを防ぐため、10日の間をあけて3回にわたってアンケート調査を行っています。最終的に761名の有効なデータが集まり、階層的重回帰分析という統計手法を用いて、動機の性質(自律的か統制的か)と、その後の知識共有・知識隠蔽行動との関連性を調べました。

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自分から進んで「助けたい」と思う人は、知識を教え合う

データ分析の結果、自発的に貢献したい人ほど情報を積極的に共有し、欺瞞的な隠蔽を控えることが判明しました。ただし、規則を理由に情報を伏せる「合理的な隠蔽」については、自発的な動機があっても抑制されないという、限定的な結果であることもわかりました。

一方、周りからよい人に見られたい、助けないとあとが面倒などといった義務感やプレッシャーで助けるという人は、自分の知識やノウハウを隠そうとする傾向が強いことがわかりました。つまり、知識を共有することで周囲からの肯定的な反応が期待できない、別の誰かに迷惑がかかるかもしれないといった対立や否定的な評価を恐れるあまり、あえて情報を隠したり、知らないふりをしたりする傾向が強まるということです。

知識共有を促進する組織づくりのヒント

部下やチームメンバーにもっと情報を共有しよう、チームのために動こうと呼びかけるだけでは、進んで協力し合い、知識を仲間に教えあう土壌が育成されません。義務感からの協力は、知識やノウハウを隠してしまう結果になるからです。

やる気の種類に注目する

単にやる気があるだけでなく、そのやる気が自分から進んでなのか、義務感やプレッシャーからなのかを見極めることが大事です。メンバーに仲間を助けたいという気持ちがあっても、同時に義務感も強いと、大切な情報を隠してしまうからです。

やらなきゃ……というプレッシャーを減らす

よい人だと思われないとダメだ、手伝わないと後で文句を言われる、といった義務感やプレッシャーが強いと、人はかえって情報を隠したり知らないふりをしてしまうようになります。ただ助け合いなさいと無理に命令するのではなく、プレッシャーを感じさせない雰囲気作りが重要です。

やりたい!という気持ちを大切にする

仲間と知識を教え合うチームにするには、メンバーが自分の知識やノウハウが誰かの役に立つと、心から感じられる環境を整えることが重要です。知識を共有したことに対する感謝やポジティブなフィードバックが循環する仕組みを作ることで自律的な動機づけが高まるでしょう。

情報のブラックボックス化を防ぎ、真にオープンな組織を作るためには、メンバーの心の内側にある動機づけに寄り添うことが求められます。
ぜひ、日々のマネジメントや組織文化の設計に本知見をお役立てください。

記事原案 新谷志津乃

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