批判報道を受けても戦略の変え幅が小さいのは、新規性で稼ぐ企業

批判報道を受けても戦略の変え幅が小さいのは、新規性で稼ぐ企業

批判されても、打つ手の変え幅が小さい会社があった

2018年、ドイツの製薬・農薬大手バイエルは、米国の農薬・種子大手モンサントの買収をめぐって批判報道にさらされました。翌年に同社が発表したのは、除草剤グリホサートに代わる持続可能な製品の開発への50億ユーロの投資です。批判が集まると、企業は何かを変える。ところが、同じように批判されても、打つ手の変え幅が小さい会社があるのです。

フェヒタ大学のサシャ・クライン先生たちは、論文「How media coverage elicits strategic change: The moderating role of the business model design」で、どんな会社が批判報道に反応して戦略を変えるのかを調べました。

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対象は、ドイツの株式市場と米国のS&P500から選んだ大企業96社です。2015年から2019年の5年分で、観測は384件。報道は、ドイツと米国の有力紙・経済紙から条件に合う記事31,970本を集め、記事ごとに否定的な言葉の割合を測り、企業と年ごとに平均しました。

戦略の変化は、企業が実際に打った手の変わり方で測ります。新製品の投入、生産能力、販促、価格、買収、提携、市場の拡大、法的措置の8種類が、前年と比べてどれだけ違う組み合わせになったかを計算する方法です。

もう一つの軸が、ビジネスモデルの設計です。目新しさで価値を生む「新規性中心」と、無駄を削って価値を生む「効率性中心」に分け、年次報告書やサイトを読んだ13人の評価者が7段階で採点しました。

分析の結果、直近で否定的な報道が増えた企業は、翌年の戦略を大きく変えていました。先行研究と同じ結果です。企業の規模が大きいほど、また報道の総量が多いほど、戦略の変化も大きくなっていました。

新しかったのは、ここに差が出た点です。新規性中心のビジネスモデルを持つ企業では、この反応が弱まっていました。批判されても、打つ手の変え幅が小さいのです。試算では、新規性の低い企業がある項目で約7件の打ち手を変えるところ、新規性の高い企業は約2件にとどまります。一方、効率性中心のビジネスモデルには、こうした調整の働きは見られませんでした。

なお、新規性中心の企業はもともと戦略を変える量が多く、報道の総量も多い傾向がありました。目新しい取り組みは業界の常識から外れるため、記事になりやすいといいます。好意的な報道が増えた場合は、戦略の変化がむしろ小さくなっていました。

ただし、なぜ反応が弱まるのかという仕組みは、この研究では切り分けられていません。経営者の自信過剰のような別の要因が、ビジネスモデルの選択と戦略の選択の両方を動かしている可能性も、完全には排除できないといいます。対象は大企業で、新聞と経済紙が中心です。

動くかどうかは、稼ぎ方で変わる

冒頭のバイエルのような場面は、規模の小さい会社にも起こります。取引先からの苦情、SNSでの指摘、業界紙の記事。何か言われたときに、すぐ打ち手を変えるべきか。研究が調べたのは大企業と主要紙の範囲ですが、そこで見えたのは、答えが会社の稼ぎ方によって変わるということでした。

研究の知見によると、目新しさで稼ぐ会社は、批判に対して戦略を変える必要が相対的に小さいようです。この見方を日常の判断に置き換えると、三つの点が浮かびます。

一つは、自社がどちらで稼いでいるかを確かめることです。価格や納期、効率で選ばれている会社は、批判が取引の条件を厳しくしかねないため、ふつうに打ち手を見直すことになります。独自の提案で選ばれている会社なら、批判が土台に届いているかをまず見極めたいところです。

もう一つは、変えない場合の伝え方です。論文は、新規性中心の企業も批判を無視してよいわけではなく、自社の路線に沿った説明を続けるべきだとしています。長く批判が続くなら、関係者が重大な問題を見つけている合図だとも書かれています。

そして、競合の動きの読み方です。効率性で稼ぐ競合は、批判を受けると打ち手を変えやすい。競合の戦略変化が空いた市場の機会を示すことがある、とクライン先生らも述べています。自社への報道だけでなく、同業への報道も追っておきたいところです。

批判されたら動く、が常識でした。この研究が示したのは、動くかどうかが稼ぎ方によって変わるということです。自社は目新しさで選ばれているのか、効率で選ばれているのか。次に何か言われたときの構えは、その答えで決まります。

記事原案 M.Sumida

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